会計事務所の付加価値業務のひとつに、リスクマネジメントの提案があります。中小企業の経営者向け保険商品の提供です。もちろん、保険本来の持つ役割である経営者の死亡リスクをヘッジして経営の永続性を図るため、資金繰り、事業承継資金として有効活用が可能なものです。
 しかし一方では、節税保険として会社の利益を減らし、法人税を圧縮する効果を持つ全額損金型の商品が多数販売されてきたことも事実です。
 特に、全損で解約返礼率の高い商品は、保険代理店機能を有する会計事務所にとっては、その販売手数料の高さが魅力的な商品となっていたはずです。しかし、今年の2月13日に国税庁から伝えられた「中小企業経営者向けの生命保険商品のうち、解約返礼率がピーク時に50%を超えるモノについては、保険料金の損金計上を見直す」という方針は、保険各社にとって大きな衝撃を与えたのではないでしょうか。
 翌日14日には、生命保険会社各社から生保代理店(会計事務所の代理店も含め)に対し、該当の保険商品の販売自粛が伝えられたはずです。これによって、当該保険商品の販売は2月いっぱいでほぼ中止となったようです。まさに決算期を迎え、提案・提供できる商品がなくなってしまったわけです。
 以前から全損型の節税保険が現れるたびに、国税庁が損金計上の条件を変更して収束するということが何度も繰り返されてきました。やはり、単に多くの収益だけを目的とした保険の販売は、会計事務所が担う本来の役割からズレているような気がいたします。
 無論、収益は重要な問題ではありますが、こと保険の販売提案においては、あらためて保険が持つ本来の役割に回帰することが必要なのではないかと強く思わされる事象でした。
 弊社主催の「実務経営研究会」においては、今回のような会計業界に大きな衝撃をもたらすニュースをいち早く取り上げ、その方向性についても微力ではございますが、示唆申し上げられればと努力邁進する所存です。
 また、この4月から新しく代表に就任した板垣新社長を中心に、より一層強化された体制で臨むところであります。これからも「実務経営サービス」「実務経営研究会」に対し、ますますのご指導、ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

株式会社実務経営サービス
代表取締役会長 中井 誠

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