株式会社カクシン 代表取締役 公認会計士 長山 宏

 第2回は、部長業に求められる能力についてご説明します。
 部長は課長と同じく、「人にゆだねて結果を出す人」です。経営者や役員が作った経営構造を所与として、その仕組みのなかで人を活用し、経営陣から求められる結果を出します。
 課長との違いは、課長が実務の技術面での責任者であるのに対して、部長は調整役であることです。
 自分が統括する部門内での各課の調整、さらに他の部門との調整、会社間の調整、上下間の調整を行って、自部門が会社で求められる結果を出せるよう、全体最適を目指してウィン・ウィンの関係性を作ります。そのため、部長は課長とは違った能力が求められます。
 部長に求められる3つの能力について説明します。

業務の本質把握能力

 業務の本質把握能力とは、これまでにやったことがない業務であっても、その業務ができる課長に質問をしたりするなど、課長をうまく使って本質を把握し、結果を出す能力です。「一芸は万芸に通ずる」といわれますが、部長に求められる能力のひとつがこれです。
 課長は特定の分野で業務を経験してプロとなり、その業務の内容に精通しています。そして業務を標準化し、部下を指導して一人前にしたり、部下の仕事の仕方を見ながら問題点を指摘して修正したりすることができる人です。
 部長の場合はその能力を一歩進め、特定の業務の本質を理解します。そして、本質を把握する能力を、他の分野にも応用できることが求められます。
 業務の本質を把握するには、以下のような物事を標準化する必要があります。

目的把握

 まず求められるのは、仕事の目的を見抜く能力です。仕事が誰に、どのように役立つのか、役に立つために何を達成しなければならないかを見極める必要があります。
 何事にもいえることですが、「何のためにこの仕事があるのか」が、最初に把握すべき事柄です。仕事ができる人は、常に目的を念頭に置き、その目的を意識しながら目的達成に向けて業務を推進します。したがって、まず目的は何かを見いだす必要があります。

手順

 次に求められるのは、仕事の手順を整理できる能力です。特定の仕事の標準的な進め方を、目的から推測して見つけることが大事です。仕事ができる人は、無駄な仕事をせずに、目的を達成するために必要な仕事を洗い出して、適切な順序で行います。
 実は、この能力はその業務をよく知らないほうが、かえって発揮しやすいのです(このことは、部長業の他の能力にも当てはまります)。仕事の原理原則を理解しており、できる人に聞きながら、「素人でも分かりやすい手順」に整理します。
 また、この能力はコンサルタントに求められる能力にも通じます。自分ができる必要はなく、「何が正しいか」を考えられることが大事です。

業務要領把握

 手順を洗い出したら、手順ごとに業務上注意すべき項目と、各プロセスで求めるべき価値、避けるべきリスクをヒアリングしながら把握して、「業務要領」をまとめる能力が求められます。
 これはマニュアルを作る能力ともいえます。下手に業務に詳しいと、いらないことばかりマニュアルに盛り込んでしまい、実際にそれを使う新人には、何が何だかさっぱり分からない代物になってしまいます。「本質を捉えながらどうすれば分かるか? できるか?」を考えてまとめることが求められます。

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