昨年の12月に、突然、TVから大量に「PayPay」というあまり聞き慣れないフレーズが流れてきて、何事かと思った方がたくさんいらっしゃると思います。私もそのひとりです(笑)。
 「PayPay」は、ソフトバンク株式会社とヤフー株式会社が合弁で設立したPayPay株式会社が手掛けているモバイル決済アプリです。派手に宣伝していたのは、このアプリを使って提携しているお店で買い物をすると、支払った額の20%をポイント還元するというキャンペーンの案内でした。100億円分のポイントを還元するとのことでしたが、開始からわずか10日で予定の還元額に到達してしまいました。
 この騒ぎは、PayPayがキャッシュレス決済時代の主導権を握るための戦術のひとつだったと考えられます。
 安倍政権は、「未来投資戦略2017」において、キャッシュレス決済比率を2027年までに、現在の2倍のおよそ40%に上げるという数値目標を掲げました。また、一昨年から国税のクレジットカード納付が可能となり、来年度からは電子マネーでの給与支払いも解禁され、キャッシュレス決済に向けた規制緩和が進もうとしています。実際、韓国ではキャッシュレス決済比率は89%となっています。
 ところで、なぜキャッシュレス決済を進める必要があるのでしょうか。
 経済産業省が昨年4月に出した「キャッシュレス・ビジョン」によると、1番目に「インバウンド消費の取り込み」、2番目に「現金決済コストの削減」、3番目に「新しいビジネスの創出」が挙げられています。
 現実問題として、現金決済のインフラには維持するために多額のコストがかかっています。通貨の発行、レジ締めの人件費、警備の費用、銀行のATM設備費用などで、社会コストの総額は1兆6000億円ほどと試算されているそうです(野村総合研究所調べ)。超低金利時代がこのまま続くと、銀行は支店網やATMのネットワークの維持がかなり厳しくなるはずです。
 また、生産性向上のため、レジ用の店員削減など省力化が必須となるなか、現金決済のコスト削減も強く言われてきています。
 実は、弊社も1月の源泉税納付に初めてクレジットカードを使ってみました。かなり高額でしたが、何とか納付が完了しました。e-Taxソフト(Web版)からクレジットカードを使用し、比較的簡単に納付ができました。これによって、キャシュフローが 55日ぶん楽になりました。さらにカードポイントが貯まります。
 今後、消費税率が予定通り上がり、政府が景気対策として打ち出しているポイント還元も実施されれば、そのポイントも貯められるはずです。これは中小企業の資金繰りという観点から、朗報といえるのではないかと思います。
 まさに、全国300万の中小企業のご支援をされている税理士、会計事務所の皆様が、このキャッシュレスイノベーション時代に先鞭をつけ、顧問先企業のキャッシュレス化のお手伝いができれば、そこから新しいビジネスチャンスが生まれるという予感がしてなりません。
 私たち実務経営研究会は、会員事務所の皆様のご発展とご成長に資するよう、最新の情報と具体的検証事例、厳選されたセミナーなどを常にお届けするために邁進する所存です。
 今年も実務経営サービスにご期待をいただければと思います。

株式会社実務経営サービス 代表取締役 中井 誠

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