株式会社エアロスペース CEO
川久保文佳

私はSAKEPAⓇという日本酒の蔵を応援する団体を運営している川久保文佳です。

日本独特の製造方法を有する文化的な価値が高い酒蔵がどんどん減っていっています。SAKEPAⓇではそんな日本酒の酒蔵が伝統を守り伝えながら、味わいや技術を後世に引き継げるようさまざまなプロモーションやイベントを行っています。

今回は栃木県小山市の「西堀酒造」をご訪問した様子をお伝えいたします。

西堀酒造の歴史をさかのぼると、江戸時代幕末から明治維新の時代になります。この地で酒蔵を始めたのは滋賀県蒲生郡朝日野村(現在の東近江市)に居を構える西堀家10代目当主の西堀源治郎氏です。その西堀源治郎氏がこの地に湧き出す日光連山からの伏流水と、豊かな水田に魅せられたことにより始まります。

酒蔵は、栃木県小山市南部の旧日光街道(国道4号線)沿いにあり、敷地内には当時を思わせる大きな建屋がいくつも並んでいます。西堀酒造の長屋門のほか、4つの建造物は国登録有形文化財になっています。奥に行くと敷地は広く、レンガ造りの高い煙突が目に留まります。当時の酒造りの繁栄を想像させます。

この地である栃木県に酒蔵が多かったのは、3代目徳川家光公の日光東照宮詣でにより、日光街道が賑(にぎ)わっていたことが影響しています。参拝に訪れる人たちが多く、お酒の需要が増加したことによって、数多くの酒蔵が軒を並べたそうです。明治7年の資料によると、栃木県の酒類生産は第3位だったそうです。それを支える関東平野の広大な水田に恵まれたことも、その理由であると感じます。

敷地内を見学していると、歴史的建造物である蔵の壁には、以下のとおり一般社団法人南部杜氏協会の酒造従業員心得が掲げられています。

一、蔵内の親和
一、火気の用心
一、清潔と整頓
一、酒税法の厳守
一、清酒原料の保全
一、労病災害防止
一、技術の研究

これらの精神継承を掲げる背景には、もともと西堀酒造が哲学を大切にした酒造りを行うという心がまえも含まれているように感じます。

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