株式会社エアロスペース CEO
川久保文佳

私はSAKEPAⓇという日本酒の蔵を応援する団体を運営している川久保文佳です。
現在、日本独特の製造方法を有する、文化的な価値が高い酒蔵がどんどん減っていっています。SAKEPAⓇでは、そのような日本酒の酒蔵が伝統を守り伝えながら、味わいや技術を後世に引き継げるようさまざまなプロモーションやイベントを行っています。

そのひとつとして、SAKEPAⓇのメンバーとともに酒蔵をめぐり、社長や杜氏(とうじ)の方々のお話を伺っています。
今回は新潟県佐渡市の酒蔵「尾畑酒造」を訪問。「学校蔵」という酒蔵の様子をお伝えしたいと思います。
その前にまず、1月1日に能登半島大地震で被災された方々へのお見舞いを申し上げます。今回伺った佐渡も大地震の被害を受けられたとのことで、重ねてお見舞いを申し上げます。
今回訪問した尾畑酒造さんは1892年創業の老舗酒蔵で、2014年に「学校蔵」という第2の蔵をオープンさせました。
学校蔵は、その名前のとおりもともとは小学校で、2010年に廃校になった旧西三川小学校の建物を尾畑酒造さんが借り受けて免許を取得し、2014年5月に運営を開始した酒蔵です。

この場所は佐渡市の海沿い標高50メートルの高台に位置し、日本で一番夕日のきれいな学校といわれ、目の前に海を臨む絶景のロケーションです。
この廃校を酒蔵として活用したいきさつは、同社の平島 健社長がこの美しい木造校舎をなんとか残したいという思いからでした。そして、日本酒を通して持続可能な地域づくりを目指すことをコンセプトに設立、運営されています。

そのため学校蔵では、再生可能エネルギーを使った酒造りを行い、副産物である酒粕や地元生産者の食材を合わせたメニューを隣接するカフェで提供しています。この学校蔵のコンセプトは第10回環境省の「環境地域ブランディング賞」を受賞しています。
学校蔵は小学校の建物をそのまま利用するだけでなく、教室や備品なども当時のままの姿で活用されています。
例えば、玄関から校舎に入ると、当時のままの下駄(げた)箱が並び、各教室や職員室もそのまま。各教室は、テーマごとに分けられた展示や体験ができる設備が並びます。
職員室だった部屋はカフェになっていて、誰でも利用が可能です。そのカフェから臨む海の景色は、なるほど日本で一番夕日のきれいな学校といわれた理由が分かる絶景を楽しむことができます。

こちらは 実務経営研究会会員 用記事です
すべての記事が読める「実務経営研究会会員(有料)」へご登録いただくと続きをご覧いただけます。