杉谷範子先生の人生100年時代を見据えた「新・相続」「第2回 障がい児の「親なきあと」と「親心後見®」」
司法書士法人ソレイユ 代表社員 司法書士
杉谷 範子
本年の8月に、「障害のある子が『親なき後』も幸せに暮らせる本」(大和出版)が出版され、発売2週間でアマゾンから在庫がなくなり、1カ月も経たないうちに増版になりました。私は及ばずながら、監修をさせていただきました。
この本の執筆者である鹿内幸四朗さんの16歳のお嬢さんはダウン症で、一人っ子です。鹿内さんご夫妻は、自分たち自身に介護が必要になったり、亡くなったりした後も、娘さんに豊かで幸せな人生を全うしてもらいたいと、強く希望しています。
子どもが未成年の間は、親が親権者として代理ができます。しかし、成年になってからは親の親権は使えず、子どもに判断能力がないとされると、成年後見制度を使って財産管理や契約などをしなくてはなりません。特に、施設に入るときに、後見人をつけるよう言われることが多いようです。
成年後見制度には、①法定後見と②任意後見の2種類があります。①法定後見は家庭裁判所に後見人を選んでもらう方法で、②任意後見は本人が事前に後見人候補者を選び、公正証書で契約をしておく方法です。
ところで、現在の法定後見では、弁護士や司法書士などの専門職が後見人の割合が72・0%、家族の後見人は21・8%1で、 裁判所が後見人に家族を選ぶことが少なくなっています。
障がい児の親は、子どものために財産を残しても、その子が成年になってしまうと財産管理ができなくなる可能性があります。子どものお金をどのように使うかの決定権がなくなってしまうのです。
また、専門職の後見人には報酬がかかります。高齢者の後見の期間はせいぜい、数年から十数年が相場でしょう。しかし、障がい児の場合は、かなり若年の時からスタートするので、数十年、場合によっては50年以上になり、その間の報酬の合計額は数千万円にものぼるかもしれません。