司法書士法人ソレイユ 代表社員 司法書士
杉谷 範子
人が亡くなった後の財産の承継を総称して「相続」と呼びます。民法では「相続は、死亡によって開始する。」と規定していますが、人生100年時代を迎えた今、従来の死亡だけの相続対策(遺言など)で準備は整うでしょうか?
内閣府の調査によると、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると推計されています。読者のご両親、そして読者ご自身も対象になる可能性があり、決してひと事ではありません。
認知症などで判断能力を失うと、それまで問題なく払い出しや売買等ができた預貯金、有価証券、不動産などの資産が凍結されてしまいます。つまり、本人の意思能力がないと資産の移動ができなくなるのです。また、会社のオーナーの場合には、株主総会で議決権を行使できないため、役員の選任等、重要事項の決定ができなくなってしまいます。
「今まで、親の代わりに問題なく財産管理や会社経営をしてきたから大丈夫」と言う家族がいます。しかし、親の代わりができるのは、本人の意思能力があればこそ。本人の指示があるので、家族が手続きの代理をすることができるわけです。
特に75歳以上の男性は要注意です
介護保険の際に必要となる「要介護認定」は、65歳から74歳では2・9%ですが、75歳以上になると、22・3%と10倍近く上昇します。また、65歳以上の要介護者となった原因をみると、女性は認知症が20%でトップですが、男性は脳血管疾患つまり脳卒中が23%とダントツです。つまり、75歳以上の男性の4人に1人が脳卒中で要介護になる可能性が高いことがお分かり頂けるでしょう。しかも、脳卒中の再発率は高く、くも膜下出血、脳出血、脳梗塞の10年間の累積再発率は、それぞれ70%、56%、50%と報告されています。特に脳梗塞の場合、発作を繰り返すたびに後遺症が重くなっていくのが特徴の一つです。一度目は軽い後遺症ですんでも、二度目の発作で体が不自由になり、寝たきりになるというケースもよく見られます(図1、図2参照)。