エフピーステージ株式会社 代表取締役 五島 聡

実務経営ニュースの誌面を借りて中小企業の未来をよくするために、これまで6回連載してきました。

  • 第1回 日本経済を支える中小企業が危ない(中小企業が抱える財務問題と事業承継問題)
  • 第2回 節税税理士問題
  • 第3回 大事な決算書(意思をもってつくる経営支援)
  • 第4回 実態貸借対照表
  • 第5回 実態損益計算書

前回は急きょ予定を変更して、「新型コロナショックを転機に経営を変革」をテーマとしました。今回は「現金損益」についてお伝えしたいと思います。

「現金損益」とは

「経営改善は経営者が数字と向き合うことで始まる」ことが原理原則ですが、数字と向き合えず、数字を知らない経営者は企業価値を上げることはできません。実際に数字と向き合えていない経営者の会社は、概して企業価値が低い傾向にあります。どのような数字と向き合うべきなのでしょうか。そのひとつが「現金損益」です。
現金損益の計算式は「(利益+減価償却)-(借金の返済元本+保険資産計上額)」です。概念は損益計算書で生んだキャッシュフローから、損益計算書に記載されないキャッシュアウトの差し引きです。
定義は一定期間のお金の出入り、企業財務そのものです。残念ながらこの現金損益を知る経営者は皆無に等しいのが現状です。月次現金損益と向き合い、目指すべき経営を考察することで、企業価値を上げる経営に成長します。

「現金損益」で目指すべき経営

それでは、現金損益を知り目指すべき経営を考察します。答えは「現金損益安定黒字経営」です。1年12カ月、毎月の現金損益を黒字にする経営です。
多くの経営者の悩みが「儲(もう)かっているのに金がない」です。例えば、経常利益が1千万円で借金の返済が3千万円のような状態です。顧問税理士からは「儲かってよかったですね」と言われますが、資金ショートの恐怖に苛(さいな)まれています。
この現金損益の赤字企業比率は、私の経験則から、8割前後ではないかと考えます。現金損益は資金ショートの状態です。現金が減少すると、銀行からの折り返し資金調達を行わないといけません。そのときに融資を受けることができればいいですが、銀行も無審査で融資をするわけにはいきません。銀行からの評価が低い場合は融資の実行はなされません。これが「折り返しの恐怖」です。

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