株式会社カクシン
代表取締役 公認会計士
長山 宏

この連載では、「経営の原理・原則」についてご説明します。
前回は「経営の原理」と「人間の原理」について解説しました。今回は原理編の後半として、「環境の原理」について解説します。
企業は、「環境適応業」だといわれています。環境の変化に対応してはじめて、存続することができるのです。環境をどう捉え、社会にどう貢献するのか。それが企業のあり方になります。
その意味で、「環境の原理」は原理編のなかでも特に重要な位置を占めています。しっかり押さえていただきたいと思います。

環境の原理

企業経営とは、自然、法律、市場、顧客、競合企業などの外部環境要因を受け入れ、自社の経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)、ノウハウ、販売力、生産力、財務力といった各種機能(内部環境)を駆使し、社会に価値を創造していくものであるといえます。そして環境は常に変化しており、その変化に対応するためにイノベーションをし続けることで、企業は存続を許されます。それが「環境の原理」です。

「環境の原理」は、
①空の原理
②心と環境一体の原理
③関係性の原理
④相似形の原理
⑤異種同形の原理
の5つで構成されています。

①空の原理

空とは、仏教の世界観における宇宙の真理を指します。
空とはゼロに近い概念です。互いに対立して打ち消し合うエネルギーが存在し、全てのものはゼロサムの状態にあるといわれています。良いだけのもの、悪いだけのものは存在せず、あらゆるものが対立する2つの側面を備えています。綺麗(きれい)なバラにはトゲがあるということです。
絶対的な存在はなく、全てのものが相互依存の関係にありますので、比較でしか物事を論ずることはできません。
長い・短い、良い・悪いなどの判断は、全て比較でしか論ずることができず、全てのものが原因と結果の関係にあることから、良いことをすれば良い結果が現れ、悪いことをすれば悪い結果が現れます。
ただし、原因と結果の関係を前提とすれば、本当は良いも悪いもなく、それぞれの判断基準で結果を捉えるしかありません。
人を愛したから愛される。人を嫌ったから嫌われる。自分が取った行動の原因と結果の関係を、現象を通して見せられているだけなのです。不幸が来たとしても、自分の行動の誤りを教えてくれたのだと捉えて行動を改めれば、その不幸の大きさに等しい幸福が訪れるでしょう。
不幸が来たから行動を改められたのであって、もし不幸が来なければ気づかずにもっと大きな不幸が来ていたと考えられます。ですから、「この程度で済んでよかった」と思うことができるのです。不幸は、幸福に至るためのコンサルタントということもできるでしょう。
空を前提とすると、自分がしてほしいことの反対をしなければ自分の思いどおりにはなりません。ですから、売りたいのなら、まずお客様に喜んでもらうことを行います。それにより、結果として、買っていただけると捉える必要があるのです。

こちらは 実務経営研究会会員 用記事です
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