エフピーステージ株式会社 代表取締役 五島 聡
実務経営ニュースの誌上を借りて「日本経済を支える中小企業を元気にするため」に、これまで4回連載してきました。
- 第1回 日本経済を支える中小企業が危ない(中小企業が抱える財務問題と事業承継問題)
- 第2回 節税税理士問題
- 第3回 大事な決算書、意思をもってつくる経営支援
- 第4回 実態貸借対照表
今回は、実態損益計算書についてお伝えしたいと思います。
5つの利益
実務経営ニュースの主な読者は税理士の先生方ですから、知っていて当たり前と思いますが、大事なのは活用の仕方です。言い換えれば、どう活用すれば顧問先企業の未来はよくなるかということです。
損益計算書の定義を「一定期間の企業の儲(もう)けであり、5つの利益で構成される」とします。5つの利益とは、①売上総利益、②営業利益、③経常利益、④税引き前利益、⑤税引き後当期利益を指します。
これを利益構造である実態損益計算書に変換すると、以下のようになります。
経営者に確認する2つの要点
損益計算書で問題になるのは、製造原価報告書がある場合です。本来の原価は変動費であるべきなのに、原価のなかに固定費が多額に混入されていると、経営者が利益構造を正確に把握できず、増やすべき利益を最大化できません。
原価に含まれる代表的な固定費に労務費や減価償却費、賃借料などがあります。これらを差し引いた実態変動費と実態粗利益、実態固定費を把握して、そのうえで出すべき利益を考察し、利益を増やす手段を検討するのです。
私が経営改善支援に入る場合に、経営者に確認する要点が2つあります。ひとつは「経営改善に対する決意は持てるか?」(やる気があるかどうか? やるべきことは全てやるか?)。もうひとつは「自社の実態粗利益率、実態固定費、実態損益分岐点売上高」です。この2つを聞く理由は、「利益は知識と意識で増やす」という原理原則があるからです。自社の利益構造を知らなければ利益は増やせません。企業価値が低く、資金繰りに窮する経営者はおしなべて、自社の利益構造を把握していないものです。顧問税理士の先生方には、顧問先の未来をよくするために実態損益計算書が持つ情報の価値をしっかり提供していただきたいと思います。