株式会社カクシン
代表取締役 公認会計士
長山 宏
これまで5回にわたり、私のコンサルティング技法であるミッションリーディングについて解説してきました。
ミッションリーディングの背景には、エニアグラムやアドラー心理学など、私が本誌で紹介してきたさまざまな手法があり、それらを統合的に活用します。ですから、ミッションリーディングの実践には、ある種の職人技的なところがあるといえます。読者の皆さんのなかには、この連載を読んで、実践するのは難しいと感じた方も多かったと思います。
今回は連載の総括として、そのような難しい技法をあえて紹介した意義を振り返ってみたいと思います。
経営者の人生そのものの目的と経営理念を連動させる
ミッションリーディングの重要なポイントは、経営を最短距離で成功させるために、経営者の人生そのものの目的と、経営理念を連動させることです。これは、経営の核心を突いた松下幸之助さんの教えです。
会社経営の成否は、全責任を負う経営者が、いかに全力で自信を持って取り組めるかどうかで決まります。ですから、経営者が自分の人生と経営理念を一体化させることが最重要項目となります。
私はこれを第一義に考え、ミッションリーディングの冒頭では、経営者に人生を振り返っていただき、そのお話をお聞きします。
そして、現在行っている事業を成功させるために、これまでの人生の大きな体験から何を学び、どのように経営に結びつければよいのかをストーリー化してレポートにまとめています。
経営者にそれを読んでいただければ、ご自身の人生におけるあらゆる出来事には意味があり、無駄なく経営の成功につながっていることが分かっていただけます。
自分の人生の歴史を連続して捉え、そのすべてに意味があることが分かれば、思考や判断にぶれがなくなり、成功への最短距離をつかむことができます。
ミッションリーディングは、経営者とコンサルタントが一緒に人生の意味を考えることを通じて、経営者が自分で何かをつかむことができれば成功だといえます。
ですから、読者の皆さんがミッションリーディングを実践したとき、経営者のために何らかの答えを導き出せなかったとしても、一緒に考えることで経営者に何かのヒントを与えることができれば、それは意味があることなのです。
経営者が抱えている無意識の失敗の罠を直す
ミッションリーディングでは、アドラー心理学の「早期回想」という技法を使い、経営者の無意識の失敗の罠を探し出して、直していただいています。
人間の行動のパターンや失敗パターンは幼少期に作られ、無意識に繰り返します。ややもすれば同じ失敗を一生繰り返すこともよくあります。ただし、失敗を繰り返すことの背景には無意識の目標があり、それに本人が気づき、意識的に「直そう」とすれば直ることを理解してください。
無意識の失敗の罠を直すためにはカウンセラーとしての技能が必要で、自我を一切挟まず、一切批判的な見方をしてはいけません。ですから、実践するためにはある程度時間をかけて訓練をする必要があります。
私たちはどうしても、他人の失敗を批判的な目で見てしまう傾向があります。そして、それをその人の人格であると見下してしまいます。
しかしその見方は誤りです。幼少期の「しめしめ、こうすればうまくいく」という経験を、無意識に繰り返しているだけなのです。それは、意識しさえすれば変えられるのです。