瀧 俊雄
株式会社マネーフォワード取締役 兼 マネーフォワードFintech研究所長。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券株式会社を経て、株式会社マネーフォワードの設立に参画。経済産業省「産業・金融・IT融合に関する研究会」に参加。金融庁「フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議」メンバー。
前号で、在宅よりもおおむねオフィスのほうが生産性が高いという、空気を読まないコラムを執筆しましたが、事態は深刻化し、多くの方々が家での勤務を余儀なくされる状況となってきました。このような働き方において、大事になるのは生産的に過ごせる姿勢、時間とルールの確保であると考えています。
仕事中の体の姿勢は、生産性と密接に関わるテーマです。いきなりの在宅勤務は、家のソファやキッチンテーブルでパソコンと向かい合うという想像を生みますが、これらは本来、リラックスや食事のためにデザインされたものであり、8時間働く目的には向いていません。理想的には仕事用の椅子の確保が望ましく、難しい場合には視線と腕の配置に気を配り、定期的に体を伸ばすことが、腰を痛めず、脳に酸素が行きやすくするために重要です。最近はあまり行われなくなりましたが、会社でラジオ体操をすることにも一定の理由があったのです。
2つ目は、時間をプロフェッショナルに使うことです。オフィスは、良くも悪くも時間を意識する空間です。人の出入りと適切な緊張感のなか、オンとオフの時間がはっきりしているのが大きなメリットです。
一方で、家は本来、オフの場所です。そのため、何か意識的な儀式をすることが有益です。個人的にはオンラインカレンダー上で、その日の予定を隙間なく、小学校の時間割のように埋めることをお勧めしています。何をしているのかが、他のメンバーからも分かるようになりますし、仕事の難しさである「始めどき・やめどき」を機械的に決めてしまうことで、自分のなかに上司と部下を抱えることが可能となります。集中力が8時間もつようにはつくられていないなか、このような儀式は結構な意味を持ちますし、事実、この原稿もそのようなカレンダー上の時間予算のなかで書かれています。
そして最後に重要なのは、これらの仕事の時間を何に用いたのかを、組織内でどう会話するルールを作るかの観点です。顔と顔を合わせることには、進捗確認だけでなく、期待値調整や安心・不安の共有、組織的なビジョンの共有など多くの役割を果たせる意味合いがあります。