さいたま新都心税理士法人 代表社員 松波竜太

 この業界に25年近くおりまして、最近になってやっと、業績管理、財務管理を行ううえで何が大切かに気づいた気がします。
 お客さんの業績はなぜ伸び悩むのでしょうか? あるいは、なぜ無理な節税をしようとするのでしょうか? あるいは、なぜ粉飾決算に走ろうとするのでしょうか?
 逆に、伸び続ける会社からは無理なお願いをされないことが多いと思いますが、それはなぜでしょうか?
 今回は、その共通点について、気づいたことをお伝えします。

経営最善の方程式はこれ

 答えをお伝えする前に、まずは、企業経営にとってなくてはならない2つの要素について考えてみましょう。
 それは、「利益」と「投資」です。
 卵が先か鶏が先かではありますが、まずは利益を確保し、それを投資に回す。あるいは、まず受容できるリスクを計算して投資し、利益を確保する。これこそが基本なのですが、受容できるリスクを計算して投資をするということが難しく、しっかりと投資できている会社が少ないのが現状といえましょう。
 「リスクテイクなくしてリターンなし」
 こんな誰でも分かりきったことができないのはなぜでしょうか? 後半で考えてみたいと思います。
 それと、投資にはひとつ欠かせないものがあります。
 「資金」です。
 投資するには必ず資金が必要になります。投資することができない理由のひとつが資金不足です。
 利益を出すためには資金が必要になります。自己資金が豊富にない限りは借りるしかありません。借りるためには、決算書上で利益を確保する必要があります。
 利益が出ていないと資金を借りることができません。過剰に投資をしてしまい、赤字になってしまうことがないように気をつけなればなりません。
 しかも、安定して借り入れをするには、毎期、毎期、継続して利益を出し続ける必要があります。「今期黒字を出したから、来期は赤字でも大丈夫」などという甘えは許されません。
 ここで経営の最高パターンを見てみましょう(次ページ図)。
 このパターンの中で、私たち会計事務所ができることは、「利益が出ているのか、そうでないのか、そこをきちんと示すこと」です。
 「そんな分かりきったことを言ってどうする?」と、思われた方もいらっしゃるでしょう。しかし、そんな安易なことではないのです。
 過去の利益は、将来の利益を予測する元になります。過去の利益の精度が低ければ、将来の利益予測の精度も低くならざるを得ません。精度の低い将来予測からは、甘い意思決定しかできません。この甘い意思決定、つまり「決めきれない」ことこそが、中小企業の成長を阻害する最大の要因なのです。
 ですから、決算整理でほとんど修正のない月次試算表こそが、経営の意思決定に欠かせず、会計事務所に求められているのです。

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