扶養控除等の是正について(2019年2月5日)

扶養控除等の是正(扶養是正)とは

 所得者が確定申告や年末調整で配偶者控除や扶養控除の適用を受けていたけれども、実は所得要件などが誤っており、正しくは控除が受けられなかったということがあります。そのような場合は、気付いた段階で直ちに年末調整の再計算や修正申告を行って納税する必要があります。
 しかし、是正せずそのままにしておくと、税務署から「扶養控除等の控除誤りの是正について」という通知が送られてきたり、電話や臨場による税務調査で是正を求められたりします。これを一般に「扶養是正」と呼んでいます。 

扶養是正にはどのようなものがあるか

①所得超過
 最も誤りが多いのが、この所得超過です。配偶者や扶養親族に一定の所得金額があるにもかかわらず、所得者本人がその金額を把握していなかったことによるものです。
②重複控除
 他の所得者と重複して控除を受けていたというものです。例えば、共働きの夫婦がどちらも同じ子供を扶養親族として控除していたようなケースです。
③年齢相違
 特定扶養親族や老人扶養親族は、控除を受ける年の12月31日時点の年齢がそれぞれ、19歳以上23歳未満、70歳以上という条件がありますが、そのような年齢の条件に合致しない人を控除の対象としていたというものです。
④その他
 扶養控除の対象となる親族は、6親等内の血族および3親等内の姻族ですが、それ以外の親族を扶養の対象としていた場合や、白色事業専従者を扶養の対象としたケースなどがあります。
 また、夫と離縁した人が寡婦控除を受けるには、扶養親族や生計を一にする子がいることが要件(死別の場合や寡夫の場合は条件が違いますのでご留意ください)ですが、その要件に当てはまらないというケースもあります。

是正のしかた

 年末調整を行っている方は、源泉徴収義務者である勤務先で年末調整の再計算を行ってもらい、追加で納付する税金を源泉徴収義務者経由で納税します。確定申告を行っている方は、所轄の税務署に修正申告書の提出と納税を行います。
(補足と解説は次ページ)

「扶養控除等の是正について」の補足と解説

扶養是正の時期

 税務署では、扶養控除等の誤りがあったものについて、徴収義務者または本人に是正を求める作業を随時行っていますが、特に多いのが例年10月頃から翌年3月頃です。
 理由は、年末調整や確定申告で是正を行ってもらうのに都合がよい時期ということがあるからでしょう。

扶養是正の主な内容

 ①所得超過、②重複控除、③年齢相違、④その他で紹介した例の他には、次のようなものがあります。
一般の障害者なのに特別障害者としていた。
同居していないのに同居老親等としていた(老人ホームに入居しているようなケースが多い)。
内縁の妻や離婚した元妻を配偶者控除の対象としていた。
青色事業専従者で給与の支払いを受けているのに扶養の対象としていた。

納付について

 源泉徴収義務者が年末調整の再計算を行って、不足分の納税をしなければならない場合は、所得者本人から不足税額を徴収して源泉徴収義務者名で納税します。
 このとき、徴収高計算書の納付の目的月は、是正した年の12月と記載します。例えば、平成29年分の是正であれば、平成29年12月分となります。
 本税は、年末調整による不足額の欄に税額だけ記載します。なお、扶養是正による納付であることを必ず摘要欄に記載することが必要です。

加算税と延滞税について

 源泉所得税および復興特別所得税の不納付加算税の取り扱いについて(事務運営指針)を参照してください。

源泉所得税および復興特別所得税を法定納期限までに納付しなかったことについて正当な理由があると認められる場合

1 通則法第67条の規定の適用にあたり、例えば、源泉徴収義務者の責めに帰すべき事由のない次のような場合は、同条第1項ただし書きに規定する正当な理由があると認められる場合として取り扱う。
1 省略
2 給与所得者の扶養控除等申告書、給与所得者の配偶者控除等申告書または給与所得者の保険料控除申告書等に基づいてした控除が過大であった等の場合において、これらの申告書に基づき控除したことにつき源泉徴収義務者の責めに帰すべき事由があると認められないとき。

 このように通常は、不納付加算税は免除されます。同様の理由により、延滞税も免除されます。一方、確定申告していた人の場合は修正申告になるため、上記事務運営指針は適用されず、通常の修正申告と同様の取り扱いとなります。
 寡婦(夫)控除については誌面の都合で1例にとどめております。ご質問の際には、「確定申告の早見表」をご参考ください。

仮想通貨に関する税務上の取り扱い(2019年2月14日)

 仮想通貨を売却または使用することにより生じる利益は、原則として総合課税の雑所得に区分され、所得税の課税対象となります。

取引区分ごとの所得の計算方法

1 仮想通貨の売却
 保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合、その売却価額と取得価額との差額が所得金額となります。
2 仮想通貨での商品の購入
 保有する仮想通貨を商品購入の際の決済に使用した場合、その使用時点での商品価額(消費税込みの金額)と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。
3 仮想通貨と仮想通貨の交換
 保有する仮想通貨を他の仮想通貨を購入する際の決済に使用した場合、その使用時点での他の仮想通貨の時価(購入価額)と保有する仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。
4 仮想通貨の分裂
 仮想通貨の分裂に伴い取得した新たな仮想通貨は、分裂時点において取引相場が存在しておらず、その時点では価値を有していないと考えられます。したがって、新たな仮想通貨を取得したときには課税関係は生じず、実際に売却または使用した時点で所得が生じることとなります。なお、その取得価額は0円となります。
5 仮想通貨のマイニング
 マイニング(採掘)等により仮想通貨を取得した場合は、収入金額(マイニング等により取得した仮想通貨の取得時点での時価)から必要経費(マイニング等に要した費用)を差し引いた所得金額が、事業所得または雑所得の対象となります。

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