瀧 俊雄
株式会社マネーフォワード取締役 兼 マネーフォワードFintech研究所長。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券株式会社を経て、株式会社マネーフォワードの設立に参画。経済産業省「産業・金融・IT融合に関する研究会」に参加。金融庁「フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議」メンバー。
国家公務員における育休取得義務化の流れが生まれつつあります。このことは、巷でいわれている以上の社会的インパクトをもたらすのではと期待しています。
私は2018年の娘の誕生時に、1カ月の育児休暇を取りました。その間に経験したのは、「休暇」という言葉とは程遠い、24時間フルタイムで臨時出動を迫られる経験でした。事後的には「懲役」という言葉のほうがよほど近かったと思っています。
1カ月の休業を経て職場に復帰したときに、ふと体が浮くように感じる「あの泣き声をいまは聞かなくて済むのだ」という安堵と、その後保育園に娘をお願いし始めてからの、保育士さんへの無限の感謝は、経験しなければ分からないもののひとつであると感じます。
日本は、例えば公的年金のモデルケースなどにも表れていますが、夫が安定した職場に勤め続け、妻は専業主婦という、現実とは乖離のあるモデルで、社会の基本的な設計が語られることがあります。育児休業は英語ではparental leaveと訳されますが、英語で見るところの「子育てのための離脱」という負担のある発想が、日本語にはありません。それだけ、夫と妻の生活には線引きがされていて、お互いの関与が制約された世界観があったことも否めません。
ただ、前述のモデルケースのような同じ職場に勤め続けられる人の割合は多く見ても3割弱であり、夫が頑張る姿を妻が育児を兼ねながら応援する家庭像は、もはや時代遅れといえます。