今回は、戦略策定講座の最終回です。これまでの議論を踏まえ、会計事務所が関与先の戦略策定にどう取り組むべきかを考えてみましょう。

相手の気持ちを理解するために、まずは自分でやってみる
これは大事な視点です。大概の経営者はコンサルタントが嫌いです。自分でリスクを負わず、できもしないで分かったふうなことを言うからです。体を張っている経営者からすると、「いい気なものだ」と思えてくるから嫌いになるのです。そんな経営者も、実際に経営を経験しており、実体験に基づく確かなことを言う人に対しては、聞く耳を持ちます。
だから相手の気持ちを理解するために、まずは自事務所の経営戦略を策定してみましょう。
また、多くの経営者に接してきた私の実感ですが、ほとんどの経営者は物事の本質を追究した経験を持たず、本質論を知りません。これは、経営者のために物事の本質を教えてくれる場所や、経営者向けの本質論の本がないからです。
本質論を知らないため、うまくいけばそれでよいと漠然と考えてしまい、本質を突き詰めた経営が行えません。しかし、経営者が納得できるように本質論を話すことができれば、経営者はきちんと本質を突き詰めてくださいます。
経営者に本質論を話すためにも、まずは自分で経営戦略の本質を突き詰めてみることが大事です。
最近の会計業界では、若い人たちが本質を追究した戦略的な事務所経営で伸びています。スタートアップの企業に徹底してアプローチし、会社の成長段階に応じたサービスを安く提供したり、相続案件に特化して、比較的難易度の低い普通の人の案件を安く多量にさばいたりしています。あれもこれもではなく、セグメントを絞って効率的に展開しています。
やり方としては、ある業界に絞ってひとつの事業部、あるいは担当者をつけて、そこを専門にやらせながら固有の問題に対処してノウハウを積み上げていきます。
戦略的な絞り込みの効果を、まずは先生方が実感されてみてはいかがでしょうか。

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