司法書士法人ソレイユ 代表社員 司法書士
杉谷 範子

人生100年時代を迎えた今、従来の死亡に備えるだけでは足りません。「任意後見」「遺言」「信託」「生命保険」を4本柱とした、生前対策を含めた相続を「新・相続」と名付けています。

令和6年4月1日より、相続登記義務化が始まりますが、一足早く当連載でも2022年11月号で詳しくお伝えしています。
義務化開始前から早めに相続登記を済ませようと、相談に来られる方が増えてきました。また、所有者がかなり以前に亡くなって、数世代を経たままになっている不動産を、今のうちに相続手続きを済ませて、自分の子どもたちには苦労をかけないようにしようとする動きも見られます。
今回は、相続登記義務化のおさらいと、関連する制度改正について解説をします。

相続登記義務化のおさらい

相続登記義務化の制度概要

不動産を相続や遺贈で取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内での相続登記が必要になります。そして、正当な理由がなく申請が漏れた場合には、10万円以下の過料が科せられます。
相続人以外が遺贈を受けて不動産を取得しても、この制度の対象にはなりません。また、遺産分割で不動産を取得した場合は、別途、遺産分割から3年以内に相続登記をする義務があります。
なお、令和6年4月1日以前に発生していた相続については、3年の猶予が与えられ、令和9年3月31日までに、相続登記をしていない場合に過料の適用対象になります。

取得を知った日から3年以内とは?

単に自分が相続人になったことを知っただけでは、「取得を知った」ことにはなりません。具体的に地番などの特定された不動産を取得したことを知って、初めて登記申請義務の3年がスタートします。

正当な理由とは?

正当な理由があれば過料の対象にはならないとのことですが、例えば、以下の場合には当てはまるそうです。

①相続人がかなり増えてしまい、相続人の把握に多くの時間を要する
②遺言の有効性や遺産の範囲等が争われている
③申請義務のある相続人自身に重病等の事情がある

3年過ぎたらどうなる?

3年経って、すぐに過料になるわけではありません。まず、法務局が調査した後、事前に登記を催告します。また、3年経過しても、催告に応じて期限内に登記手続きをすれば過料にはなりません。

こちらは 実務経営研究会会員 用記事です
すべての記事が読める「実務経営研究会会員(有料)」へご登録いただくと続きをご覧いただけます。