井上雅之
Paris Miki International SA
海外生活も今年で43年になる。パリとジュネーブで育ち、現在はチューリッヒで生活している。
チューリッヒの街を散歩していると、街角や広場、また公園など、ところどころに噴水があることに気がつく。世界で最も噴水が多い街のひとつ、「水の街チューリッヒ」には、なんと1200以上の噴水がある。そして噴水から流れ、飛び出している水はほとんどの場合、飲料水として飲むことができる。そのため、鞄にマイ水筒を忍ばせておけば、いつでもフレッシュでおいしい水を無料で飲むことができるのだ。わざわざスーパーでペットボトル水を購入する必要もないので、お財布にも地球にもエコといえる。
アルプスの雪解け水は山上に点在する小さな湖に流れ込み、谷を下った流水はブリエンツ湖やルツェルン湖、またレマン湖など大小さまざまな湖までたどり着く。そして長い道のりの末、アルプスで生まれた水は終点の地中海、黒海や北海に流れ込む。
国土の7割をアルプス山脈とジュラ山脈が占めているスイスには、実に約1500個の湖が存在していて、ライン川、ドナウ川、またローヌ川など欧州を代表する川の源流はスイスにある。スイスが「山の国」とも「ヨーロッパの水の城」とも呼ばれているのも納得がいく。
ちなみに映画ジュラシック・パークはジュラ紀に由来していて、ジュラ山脈では恐竜の足跡が多く発見されていることでも有名である。
そのような自然に恵まれたスイスだからこそ、スポーツを満喫できる施設や環境が充実している。夏には水上スキーやヨット、春秋はハイキング、冬にはスキーを楽しむ。サイクリンガーにとってアルプス山脈や湖沿いの絶景ロードはまさに天国である。さらに、ツェルマットの氷河で夏スキーにチャレンジすることさえできるので、一年を通してアウトドア三昧だ。
しかし悪天候の週末は、退屈な、地獄の一日となってしまう。日本や米国と違って、日曜日や祭日はデパートやショッピングモールなど全ての店は閉まっているので、時間つぶしさえできない。
そのようなとき、私は決まって友人たちと行きつけの喫茶店に集合して「シーブル」をしていた。そして誰が最初に誘ってきたのかは忘れたが、気がついたら毎週日曜日の夜は仲間とテーブルを囲むようになった。悪天はただの口実だったのかもしれない。
スイスやスイス隣国のドイツ語圏地域では「シーブル」、もしくは「ヤス」と呼ばれるトランプゲームが非常にポピュラーだ。正直、誰が、何が楽しくて見ているのか分からなかったが、一昔前にはシーブルを楽しむ人たちの姿をひたすら流し続けるテレビ番組があったほどだ。