司法書士法人ソレイユ 代表社員 司法書士
杉谷 範子

人生100年時代を迎えた今、従来の死亡に備えるだけでは足りません。「任意後見」「遺言」「信託」「生命保険」を4本柱とした、生前対策を含めた相続を「新・相続」と名付けています。今回は、直接「新・相続」に結びつきはしませんが、早めに改善することをお勧めする内容です。

平成18年、会社法施行

平成18年5月1日の会社法施行前、旧商法において、株式会社では株券を発行することを原則としていましたが、現実には中小企業で株券を発行する会社は少なかったようです。なぜならば、実際に株券の発行をするとなると、印刷や株券の保管などの費用負担が大きいことや、株券を紛失してしまうリスクなどの不都合が生じるからでした。

会社法では、株券不発行が原則となり、定款で別途、「株券を発行する」と定めることにより株券を発行できるように変更されました。なお、上場企業については、平成21年1月の株券電子化により、強制的に株券不発行に移行されています。
ところで、平成18年5月1日以前に設立された株式会社では、株券発行が原則でしたので、株券を発行していなくても、会社の登記簿には「株券を発行する旨の定め」として「当会社の株式については株券を発行する」と記載がされました。法律が変わっても自動的に株券が不発行になるわけではありません。この登記が残っている会社(「株券発行会社」)が、現在でも数多く見受けられますが、「株券発行会社」にはさまざまなリスクがあります。

株券発行会社の登記簿

会社が株券発行会社のままなのかは、登記事項証明書を取得してみると分かります(図1)。

図1 株券発行会社の登記簿
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図1 株券発行会社の登記簿

株券発行会社のリスク

それでは、登記簿に記載が残っている株券発行会社のリスクについてお伝えしていきます。

〈リスク1〉株券を渡さないと贈与の効力がない

株券発行会社の株式を贈与や売買するには「株券の交付が必要」とされており、株券の交付がなければ、株式譲渡は無効となります。相続対策で後継者などに株式を贈与し、贈与税を納めても株券を渡していなければ、贈与は効力が生じないことになってしまうのです。数年かけて株式を徐々に贈与していても、その効力が生じなかったとなるとダメージは計り知れません。もともと株券を発行していないのであれば、会社の定款を「株券不発行会社」へ変更する手続きを取る必要があり、もちろん登記も完了させておかなければなりません。

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