人生100年時代を迎えた今、従来の死亡に備えるだけでは足りません。「任意後見」「遺言」「信託」「保険」を4本柱とした、生前対策を含めた相続を「新・相続」と名付けて、この連載で紹介しています。なお、登場する会社や人物は架空のもので、事例は数社の実例を組み合わせております。

中小企業の後継者不足が問題になっています。経営者不在の会社は廃業を選ばざるを得ない状況に陥ることも多く、社員にとっては働く場所がなくなり、収入が絶たれることになりますし、今まで培った技術やノウハウ、育てた人材の喪失は、地域社会、国家の大きな損失でもあります。
親族内に後継者を見つけられない中小企業において、親族外の役員と社員が会社の伝統と技術を守り、一丸となって承継した事例をご案内します。

  • A社の2代目社長山田正太郎(75歳)と妻貴子(73歳)の間には子どもがいない。
  • A社の株主構成は、正太郎60%、貴子30%、貴子の弟清一が10%。
  • A社の創業者故田島由蔵は正太郎の妻貴子の父。正太郎は娘婿。かつて、A社の株式は由蔵の相続で貴子に30%、清一に70%承継されていた。
  • 清一はA社の役員だったが、資質に問題がありトラブルを起こしてA社を去った。
  • 清一は会社を去った後、自分の株式の70%のうち、60%を外部に売却したため、A社は乗っ取りの危険にさらされたが、正太郎がA社の株を取り戻し、危機を脱することができた。
  • 現在、社長は第一線を退いており、実質的にA社の経営判断を任せられているのは専務取締役木村直と常務取締役今井明だが、両方とも親族外である。
  • A社は売上、利益ともに毎年伸びており、地域社会に欠かせない存在。
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