司法書士法人ソレイユ 代表社員 司法書士 
杉谷 範子

人生100年時代を迎えた今、従来の死亡に備えるだけでは足りません。「任意後見」「遺言」「信託」「保険」を4本柱とした、生前対策を含めた相続を「新・相続」と名付けて、この連載で紹介しています。なお、登場する会社や人物は架空のもので、事例は数社の実例を組み合わせております。

子どもがいない夫婦の相続はどうなる?

お子さんのいないご夫婦の相談が増えています。新・相続での対策を何もしていないと、残された配偶者にかなりの苦労が待ち構えています。特に、財産のある男性が先に亡くなると、相続手続きや相続税の納税で奥様は大変厳しい状況に陥ります。現在、70~80代のご夫婦では専業主婦が多く、財産管理は夫任せで事務手続きに不慣れな方も少なくありません。
そこで、今回は高橋さんご夫妻の対策について検討します。高橋二郎さんは最近、末期がんが見つかり大きなショックを受けましたが、長年連れ添ってきた妻悦子さんの今後を考えて、どのような対策を講じておけばいいのか、ご夫婦といとこの本田夫妻の4名で相談にお見えになりました。

  • 二郎さん(75歳)は3人きょうだいで、兄と妹がいます。
  • 二郎さんの兄一郎は米国に移り住み、既に40年になります。お互いに連絡を取り合ったりすることはありませんでしたが、最近、一郎さんが亡くなったと一郎さんの妻から連絡が入りました。一郎さんにはお子さんが一人いるらしいのですが、詳しいことは分からず、日本語はおぼつかないようです。
  • 二郎さんの妹清美さんは重い認知症で判断能力がなく施設に入居しています。
  • 二郎さんの趣味は投資と蓄財で、サラリーマンをリタイア後も毎日、外貨や株式のマーケット情報を入手して、預金通帳の数字が増えることを楽しみにしており、将来は豪華な老人ホームで優雅な終末を迎える準備をしていました。財産は、自宅と国内の預貯金、有価証券などの金融資産が約2億円、シンガポールの銀行にも預金があるようです。ところが、先日、健康診断を受けたところ、末期がんが見つかり、余命半年との宣告を受けました。
  • 妻悦子(70歳)さんには兄弟姉妹はいません。専業主婦で二郎さんを支えており、いままでに貯めた「ヘソクリ」は1000万円ほどあります。人付き合いが苦手なため、夫の親族とは疎遠でした。唯一、親しくしている親族は悦子さんのいとこの本田さんご夫妻で、何かと悦子さんを気遣ってくれています。二郎さんのがんが発見されたときも、すぐに駆けつけて寄り添ってくれました。悦子さんは本田さんご夫妻と一緒だと心が休まるのでした。
  • 二郎さんと悦子さんのご両親は既に亡くなっています。
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