杉谷範子先生の人生100年時代を見据えた「新・相続」「第20回 高齢者オーナーの底地に会社の建物が建っているリスクは?」
司法書士法人ソレイユ 代表社員 司法書士
杉谷 範子
人生100年時代を迎えた今、従来の死亡に備えるだけでは足りません。「任意後見」「遺言」「信託」「保険」を4本柱とした、生前対策を含めた相続を「新・相続」と名付けて、この連載で紹介しています。
中小企業の事業承継対策において、会社建物は会社所有、底地はオーナー個人所有というケースが多くあります。
ソレイユ食品加工には、どのようなリスクが考えられるでしょうか?
株式会社ソレイユ食品加工(図1・2)
〈懸念事項〉
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〈リスク1〉常太郎会長の生前に起きる可能性があるリスク
→ 常太郎会長の認知症により、融資が受けられないリスク
「孝之社長は資金繰りに悩む毎日」です。無借金経営を通してきましたが、今後、融資を受けるための体制を整えていく必要があります。
会社が金融機関から融資を受ける際には、担保として不動産を提供することが多いのですが、万が一、底地所有者の常太郎会長が重い認知症になり判断能力を喪失すると、抵当権や根抵当権などの担保権を設定することができません。常太郎会長に成年後見人をつけても、会社が債務者となる融資は常太郎会長の財産を減らす行為であり不利益とされるため、認めてもらえません。
名古屋家庭裁判所のホームページにQ&Aが掲載されていたので参考までに引用します。1
Q:成年後見人等に選任されたら、本人の不動産に担保を設定し、金を借りることができますか。
A:成年後見人等は、本人のために、本人の財産を適切に維持し管理する義務があります。そのため、一般的に本人の利益を損なうような以下の行為は原則として許されません。
- 本人を借金の保証人としたり、本人名義の不動産に担保権(抵当権)を設定したりすること
- 元本割れのリスクを伴う金融商品を購入するなど財産を投機的に運用すること
- 成年後見人等やその親族に対し、本人の財産を贈与、貸し付けするなど本人以外の者のために財産を使用すること
1)URL:https://www.courts.go.jp/nagoya-f/saiban/tetuzuki/qa/index.html
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