人生100年時代を迎えた今、従来の死亡に備えるだけでは足りません。「任意後見」「遺言」「信託」「保険」を4本柱とした、生前対策を含めた相続を「新・相続」と名付けて、この連載で紹介しています。

はじめに

事業承継案件を受任していると、経営者や資産家に知的障がいや精神障がいのあるお子さんがいらっしゃるケースがあります。そのようなお子さんがいらっしゃるからこそ、人一倍、エネルギーを注いで仕事に打ち込むことができたのでしょう。しかし、後見制度について、詳しい知識のあるクライアントは少ないと思われます。お子さんを守るために今回の内容をお伝えし、事前の対策を講じていただきたいと思います。

18歳成人と知的障がい者の「親なき後問題」

本年3月18日、日本記者クラブにて一般社団法人 日本相続知財センター本部専務理事の鹿内幸四朗さんとともに、上記議題についての記者会見の機会を頂きました1
鹿内さんには、ダウン症の一人娘さんがいます。私は鹿内さんご夫婦と一緒に、お嬢さんが一生涯、幸せで豊かな人生を送るためにはどうしたらよいのかを考えてきました。
約140年ぶりに成年の定義が見直され、成人年齢が20歳から18歳に引き下げになりました。そしてこの民法改正が、障がいのあるお子さんの将来の対策を考える、大きなきっかけになりました。
障がい者のお子さんを持つ親は二度死ぬと、鹿内さんは言います。一度目は高齢になって判断能力がなくなり、お子さんのお世話ができなくなるとき。そして、二度目はこの世から旅立つときです。
いわゆる、障がいを持つお子さんの親なき後の問題です。

1)URL:https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/36266/report

日本記者クラブで行われた記者会見の様子 杉谷範子氏 鹿内幸四朗氏
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3月18日に日本記者クラブで行われた記者会見の様子 杉谷範子氏 鹿内幸四朗氏

成年年齢の引き下げ

成年年齢の引き下げによって大きく変わることが2つあります。
ひとつは、子が親の同意を得ずに契約が可能であるということです。携帯電話を購入する、アパートを借りる、クレジットカードを作成する、などさまざまです。
もうひとつは成人になると自動的に親権がなくなる、ということです。

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