司法書士法人ソレイユ 代表社員 司法書士
杉谷 範子

人生100年時代を迎えた今、従来の死亡に備えるだけでは足りません。「任意後見」「遺言」「信託」「保険」を4本柱とした、生前対策を含めた相続を「新・相続」と名付けて、この連載で紹介しています。

実質的支配者リスト制度が本年1月31日からスタート!

本年1月31日から「実質的支配者リスト制度」が開始しました。実質的支配者(Beneficial Owner)の頭文字を取り、「BOリスト」といわれています。この制度を調べていくにつれて、老舗企業かつ大株主が高齢であるオーナー企業の場合には、新・相続による対策がいち早く必要だと感じました。
従前から金融機関は「実質的支配者」の確認をしていましたが、今回の「実質的支配者リスト」は、かなり厳格な取り扱いになるので、注意が必要です。

従前の「実質的支配者」の金融機関への申告

平成28年10月1日の改正犯罪収益移転防止法(以下、犯収法)の施行に伴い、会社代表者が会社の預金口座開設や保険契約など、金融機関と取引をする際には、「当該法人の実質的支配者の氏名・住居・生年月日」ならびに「当該法人と実質的支配者との関係」の申告が必要となりました。
これは、マネー・ローンダリングに利用されたり、テロリズムに対する資金供与に利用されたりすることを防ぐことを目的としたもので、日本国内だけではなく、国外からの要請としても高まっていました。
会社は「会社の登記事項証明書」「印鑑証明書」「定款」などを提出すればよく、ハイリスク取引の場合にのみ、株主名簿が必要でした。ハイリスク取引とは、「他人になりすましている疑いまたは過去に偽りの申告をした疑いがあるなどの場合」を指していたので、該当する会社はかなり少数だったと思われます。また、株主の「意思能力の有無」については、確認をすることは明示されていませんでした1
また、会社設立の際の定款認証のときに、公証人に対して、実質的支配者に関する申告をする必要がありましたが、既存の株式会社においては、そのような仕組みはありませんでした。

1 金融庁パンフレット(https://www.fsa.go.jp/common/about/pamphlet/20161001.pdf

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