杉谷範子先生の人生100年時代を見据えた「新・相続」「第17回 実家信託®は同居・二世帯住宅にも有効!(後編)」
司法書士法人ソレイユ 代表社員 司法書士
杉谷 範子
人生100年時代を迎えた今、従来の死亡に備えるだけでは足りません。「任意後見」「遺言」「信託」「保険」を4本柱とした、生前対策を含めた相続を「新・相続」と名付けて、この連載で紹介しています。
前回のあらすじ
高橋和子さん82歳は、10年前に夫の和彦さんを亡くして、現在、息子の健一さん、嫁の久美さん、孫2人に囲まれて、5人家族で仲良く暮らしています。健一さんには、姉の山田直子さんがいます。和子さんの財産は、自宅不動産が6000万円(相続税評価6000万円)、預金が4000万円で合計1億円です。和子さんは常々、「息子夫婦には、お父さんの介護でとてもお世話になったし、私もこれから迷惑をかけるかもしれないから、息子には多く財産を残したいと思っているのよ。私が亡くなったら自宅は健一へ相続させて、預金は健一と直子で半分ずつ分けてね」と言っています。
嫁の久美さん、動く!
久美さんは、遺言の相談に来られました(図1)。
杉谷 今、お住まいのご自宅ですが、お義母様と同居していて、お義母様が土地と建物の所有者なのですね。
久美 最初は義父の名義でしたが、自宅を含めてすべての財産は義母が相続しました。私の友人もお姑さんと同居していたのですが、最近、お姑さんがお亡くなりになりました。すると、それまで疎遠だった弟夫婦の態度がガラリと変わってしまい、家を売ってお金で分けろと言ってきたそうなのです。友人は嫁として、仕事を辞めて夫の両親の介護を担っていたので、自宅がなくなったらこれからの生活が大変になると、とても困っています。
杉谷 それは大変ですね。お義母様は遺言を残してくれそうですか?
久美 遺言を書いてほしいと持ちかけることは私からはできませんし、夫に相談しても、のほほんとして、「なんとかなるよ、ウチは揉めないから」と、意に介しません。わが家が相続で揉めないか、母が亡くなったあと家は夫が相続できるのかと不安になっています。民法が改正になって、親の介護をした人にも権利があると聞いたのですが……。