日本経営ウィル税理士法人
トータルソリューション事業部
韓国税務担当 顧問税理士 親泊伸明
韓国税務担当韓国税務担当 李 榕濟(イ・ヨンゼ)
韓国税務担当       崔 暎銀(チェ・ヨンウン、日本名:戸野由理)

在日韓国人の尹(ユン)さんは、相続によりお父さんが韓国に所有していた不動産や預金を相続しました。韓国財産の名義変更はどうすればよいでしょうか。注意すべきことがあれば教えてください。

相続により韓国財産を取得した場合、被相続人名義の不動産や預金などを相続人名義に変更する手続きが必要になります。この手続きを「遺産分割」といいます。在日韓国人のように日本に住んでいる韓国籍の方に韓国財産の名義を変更することに制限はありませんが、名義変更をするための必要書類や手続きにおいて韓国の居住者と異なるところがあります。また、相続人のうち日本籍に帰化した方についても必要書類が異なりますので、事前に確認をしておく必要があります。

遺産分割

遺産分割の方法は、日本の場合も韓国の場合も同様の方法が定められています。
被相続人の遺言があり、遺産分割の方法について具体的に指示されている場合には、遺言に示された被相続人の意思が尊重され、その意思に基づいて分割を行うことになります。この遺言書による分割を「指定分割」といいます。
「遺言書がない」場合、または、遺言書があっても遺産分割に関する具体的な指示がない場合には、相続人全員で話し合って分割を決めることになります。これを「協議分割」といい、この協議を遺産分割協議といいます。遺産分割協議は、相続人全員が参加して協議しなければならず、合意できれば遺産を分けることができます。なお、遺産分割協議が終了すると、後日、争いやもめ事が起こらないように遺産分割協議書を作成して相続人全員が署名し、実印による押印をしたうえ印鑑証明書を添付しますが、韓国籍の方の韓国の財産の名義変更には日本の印鑑証明書は使えませんので、後述する別の手続きが必要となります。
相続人の間で遺産分割協議がまとまらない場合や、協議に応じようとしない相続人がいる場合には、家庭裁判所に対して、遺産分割の調停を申し立て、裁判所を通じて話し合うこともできます。これを「調停分割」といいます。
調停分割とは、家庭裁判所の調停を利用して遺産分割の話し合いをする手続きで、話し合いがまとまらない場合もあり、まとまらない場合には遺産分割調停は不成立となります。
遺産分割調停が不成立になると遺産分割の審判となり、裁判官(家事審判官)が遺産の分け方を決めることになります。これを「審判分割」といいます。
このような「指定分割」「協議分割」「調停分割」「審判分割」の制度は、韓国も日本と同様の制度を設けています。
なお、遺言の制度については、2021年7月号に掲載された第4回で説明していますので、そちらを参照してください。

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