司法書士法人ソレイユ 代表社員 司法書士
杉谷 範子

人生100年時代を迎えた今、従来の死亡に備えるだけでは足りません。「任意後見」「遺言」「信託」「保険」を4本柱とした、生前対策を含めた相続を「新・相続」と名付けて、この連載で紹介しています。
実家の所有者となる親の認知症を原因とする空き家の増加が懸念されます。高齢社会に向けて、2016年には「空き家にさせない!『実家信託』」(日本法令)を出版させていただきました。この本では、家族信託の対象を実家に絞って「実家信託」と名付け、事例別に契約内容や不動産登記、税務についてご紹介しています。
そして本年9月17日には、高齢者世帯が住む実家について、気になってはいるが実際にどのように動いていいのか分からないという方のために、「知識ゼロからの空き家対策」(幻冬舎)を上梓しました。
この本では、空き家の明暗を分ける対策の5つのポイントなど、どのような対策をしていけば、空き家を防ぐことができるのかを具体的に図表を交えてご案内しています。

重い認知症の人の家は売却できない!

高齢社会において、空き家問題が深刻化しています。空き家といえば、人口減少の激しい地方の問題と思っていらっしゃる方が多いと思いますが、空き家は全国いたるところで増え続けています。
先日、東京の都心の一戸建ての相続登記のご依頼がありました。
5年ほど空き家だったとのことでしたので、ご依頼者に事情をお伺いすると、「既に父親は亡くなっており、母親が独りで実家に住んでいたが高齢のため独居が難しくなり、施設でお世話になることになった。施設に入ってしばらくすると母親の認知症が重くなり、私が娘か誰かも分からない状況に陥ってしまった。実家の所有者である母親の判断能力がなくなってしまい売ることができなかったが、今回、母親が亡くなったので、ようやく売却にこぎ着けることができる」とのことでした。
この事例のように、多くの方の一番身近で切実に迫ってくるのは、高齢の親が住んでいた、いわゆる「実家の空き家問題」でしょう。

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