株式会社カクシン
代表取締役 公認会計士
長山 宏
社長のための「役員業」も、いよいよ最終回になりました。今回は、役員が社内を掌握する方法をご説明します。
役員は、事業や機能の責任者として結果責任を負います。結果責任を負うためには、配分された役割を、各人が強く認識し、責任を持って果たしていただく必要があります。本稿ではそのための方法論をお伝えします。
役員は結果責任を負う
役員は結果責任を負うために、自分の管掌分野の状況を正しく掌握しながら確実に結果を出す必要があります。
課長にしても、部長にしても、それぞれ責任を負うことにはなっていますが、本当の結果責任を負っているのは役員以上です。
役員は労働契約というよりも委任契約で、会社から委嘱された業務について結果を出すことが最重要課題になります。
労働契約の場合は実際に働けば成果が上がらなくても給与はもらえますが、役員の場合は結果を出しさえすれば働く必要すらありませんので、全く違う立場なのです。
役員がよい結果を出すためには、管理職を中心に社員がきちんと働き、適切な行動を取りながら狙った結果を出さなければなりません。そのためには、状況を掌握することが必須といえます。
管理職への動機付けと意識改革
結果を出すためには、各管理職の地位が高い人から順に、役割期待についてのコンセンサスを得る必要があります。そして、「何が何でも期待されている結果は出す」とコミットさせます。もしも、少しでも懸念がある場合は、状況報告をするように習慣付けることが大事です(役員が何もしなくても、各管理職が確実に期待されている結果を出してくれることが基本です)。
大事なことは、管理職への動機付け、意識改革を行うことです。これは、ほとんどの会社でできていないことです。
管理職ごとに、それぞれの組織における会社全体での役割について、明確に定めなければなりません。また、そこでの役割認識は、各階層の管理職ごとに、全体が一致していなければなりません。管理職はその任を果たすことができることを前提にリーダーを任されており、任されている内容については結果を出すことが当然です。
それをうまく行っているのが稲盛和夫さんです。稲盛さんは、100%達成でないと許されないリーダー、つまり「アメーバ・リーダー」が組織の中枢を担う仕組みを考えました。
アメーバ・リーダーは、全員が経営者という合言葉、フィロソフィーのもと、結果を確実に出すことが求められます。
経営者とは結果を出す人だと稲盛さんは定義しています。役員は管理職にアメーバ・リーダーとして責任を持たせ、出すべき成果を明確に意識しながら、どんなことがあっても達成するぞという強い戦士に育てることが重要です。それが実際にできているのがアメーバ経営なのです。
何が何でも期待されている結果を出すために、役員は各管理職、部長、課長を通じて、全員にそのような状態をつくる必要があるのです。