井寄事務所 代表 特定社会保険労務士 井寄奈美 氏

私は、現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程に在籍し、労働法の研究をしています。本業は社会保険労務士です。40社ほどの顧問契約先の業務を2名のスタッフとこなす日々です。その他、執筆業も生業としており、毎日新聞のウェブニュースの連載を抱え、現在9冊目となる書籍の執筆中でもあります。多忙ななか、社会人として大学院に在籍することのメリットをお伝えしたいと思います。

社会人大学院生になったきっかけ~お客様の質の変化に合わせた自分のレベルアップ!

私が大学院で学ぼうと考えたのは今から6年ほど前のことです。当時、既に7冊の書籍を出版しており、顧客も順調に増え、事務所の経営も安定していました。そのままやっていけば、70歳までなんとか事務所を続けることができるだろうと漫然と考えていました。
ただ、書籍の出版がきっかけで、上場企業のお客様をはじめとしたコンプライアンス重視のお客様が増え、これまでの仕事のやり方に限界を感じ始めていました。開業当時からのお客様は、従業員数20名以下の小さな会社が多く、コンプライアンスというよりも、損得勘定の視点から、経営者を納得させて、法令に従った労務管理にいかに近づけるかが最大のテーマでした。そうした小さな会社では、労務管理のベースにあるのは、法令よりも、経営者の価値感や従業員との個人的な人間関係でした。
それに比べ、人事部があるような一定規模以上の会社は、法的根拠を基に労務管理がなされています。決裁権を持ち、自分が全ての責任を負う中小企業の経営者とは違い、人事部の担当者は上層部の決裁を得る必要があります。さらに定期的な異動があるため、後任者への引き継ぎをスムーズに行うため、前例重視、新しいことをする際には、その経緯を文書で残すようにとされています。これらの会社では、担当者が何らかの決断をする際に、外部の有識者の意見を参考にしたというエビデンスを残すために、われわれと契約してくださっているのです。
そうなると、これまでの小さな会社の経営者の損得勘定を揺さぶって納得させるという手法では通用せず、裁判例などをベースとした法的根拠のある説明が求められることになります。

こちらは 実務経営研究会会員 用記事です
すべての記事が読める「実務経営研究会会員(有料)」へご登録いただくと続きをご覧いただけます。