杉谷範子先生の人生100年時代を見据えた「新・相続」「第10回 ロイヤルカスタマーのためのM&A準備信託 「事業承継と相続放棄」」
司法書士法人ソレイユ 代表社員 司法書士
杉谷 範子
人生100年時代を迎えた今、従来の死亡に備えるだけでは足りません。「任意後見」「遺言」「信託」「保険」を4本柱とした、生前対策を含めた相続を「新・相続」と名付けて、この連載で紹介しています。
ソレイユ製作所(株)の「新・相続」の巻 (中編)
(本稿に掲載された会社名、個人名は全て仮名であり、複数の事例を組み合わせてご紹介しています)
前回のあらすじ
- ソレイユ製作所は昭和60年代に設立された首都圏近郊の製造業の会社です。事業自体は継続可能ですが、会社の借入金が5億円あり、社長は連帯保証人になっています。
- 家族の中で会社を承継する者は見つからず、社長の5億円の連帯保証債務を背負うのは荷が重過ぎるため、推定相続人は相続放棄を考えています。
- 社長が末期がんで「半年から1年の命」と宣告されたため、早急に対策を講じる必要が生じてきました。
株式の譲渡によるM&Aにおいては、株主全員が確実に株式を譲渡できる体制にしておく準備が大切です。M&Aの買い手を探しながら、まずは定款の見直しと名義株主の整理を行うことにしました。
株券発行義務
ソレイユ製作所は、定款上は株券発行会社でしたが、実際には株券を発行していませんでした。もし、株主が株券の発行請求をしてきた場合には、会社は株券を発行し、交付しなくてはなりません。株券を手にした株主は、その株券を譲渡することができるのです。
実際に、ある日突然、株主の代理人弁護士から株券発行依頼の内容証明が送られてきた会社を数社、私は経験しています。
こちらは
実務経営研究会会員
用記事です
すべての記事が読める「実務経営研究会会員(有料)」へご登録いただくと続きをご覧いただけます。