司法書士法人ソレイユ 代表社員 司法書士 
杉谷 範子

人生100年時代を迎えた今、従来の死亡に備えるだけでは足りません。「任意後見」「遺言」「信託」「保険」を4本柱とした、生前対策を含めた相続を「新・相続」と名付けて、この連載で紹介しています。

ソレイユ製作所(株)の「新・相続」 の巻 (前編)

(本稿に掲載された会社名、個人名は全て仮名であり、複数の事例を組み合わせてご紹介しています)

 ソレイユ製作所は昭和60年代に設立された首都圏近郊の地方都市にある製造業の会社です。2000坪の敷地には、本社の事務棟と工場の合計3棟が建つ地元密着型の企業で、地域住民からの信頼も厚く、毎年数名の新入社員を地元から採用しています。コロナ禍においても影響は少なく、事業はうまく回っているとのことです。
 創業者の社長星野勉さんは70歳、奥様の星野鈴子さん(68歳)、長男星野優一さん(45歳)、長女佐川ゆかりさん(43歳)の4人家族です。
 長男優一さん、長女ゆかりさんには、それぞれ子どもが2人ずついます。
 奥様の星野鈴子さんは会計担当で、社長とともに、長年、会社を支えてきました。
 長男優一さんは大手企業の部長職に就いており、東京で暮らしています。ソレイユ製作所とは無関係で、会社に入る予定もありません。
 長女ゆかりさんは、保育士をしています。配偶者、いわゆる娘婿の佐川英治さんはソレイユ製作所に入社しており、工場長として働いています。星野社長の親族の中で、唯一、会社に入っているのは英治さんです。英治さんは、職人気質で真面目に仕事に打ち込むタイプですが、経営者として俯瞰して全体をまとめることは不得意で、後継者としては力不足の感は否めません。

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