日本経営ウィル税理士法人
トータルソリューション事業部
韓国税務担当 顧問税理士 親泊伸明
韓国税務担当 李 榕濟(イ・ヨンゼ)
韓国税務担当 崔 暎銀(チェ・ヨンウン、日本名:戸野由理)
はじめに
日本と韓国に財産を所有している韓国籍の 尹(ユン)さんは、国際相続に詳しい専門家を訪ねて日本と韓国の相続に関する法律の違いについて尋ねました。そのなかで、日韓両国の民法・相続税法は大きく違い、その違いを知っていなければ正しく相続税の申告をすることができないことを知りました。
今回は、日本と韓国の相続税法の違いについて気になる点を解説いたします。
日韓相続税法の違い:課税方式
尹さんは、知り合いから韓国の相続税のほうが日本の相続税より高いと聞きました。それは本当でしょうか?
相続税の計算は複雑で、財産の金額や相続人数などで税率が変わることになりますので、韓国と日本どちらの相続税が高いかは一概にはいえませんが、日本より韓国の相続税が高くなりやすい理由として、日本と韓国の相続税課税方式の違いが考えられます。
相続税の課税方式には、「遺産課税方式」と「遺産取得者課税方式」があります。
「遺産課税方式」は、被相続人の遺産全体を課税対象として課税する方式であり、韓国・米国・英国などにおいてこの課税方式が採用されています。
これに対し「遺産取得者課税方式」は、被相続人の遺産額に関係なく相続人等が相続等により取得した財産を課税対象として課税する方式であり、日本・ドイツ等において採用されています。
韓国の場合は「遺産課税方式」であり、日本の「遺産取得者課税方式」と異なります。すなわち日本は財産をもらった人にもらったことに対して課税し、韓国は財産を遺(のこ)したことに対して財産そのものに課税するということです。
次ページ図1のように、日本では、まず相続人に財産を分けたうえで、それに税率をかけます(正確には法定相続分に応じて分けたものとして計算します)。韓国では、財産を分ける前の全体に税率をかけることになります。相続税は日韓ともに超過累進税率を適用しますので、一般的には「遺産課税方式」を採用している韓国の方の相続税の税率が高くなりやすいのです。