ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士 古尾谷裕昭
相続支援部統括マネージャー 税理士 西井 康浩

ネットを最大限に活用しながら新設法人中心に顧問先を5000社まで拡大してきたベンチャーサポート税理士法人。そのベンチャーサポートが、これまで取り扱ってこなかった相続税・資産税分野に取り組むべく、「東京相続サポートセンター」を立ち上げた。相続税・資産税業務は会計事務所にとって高付加価値案件だが、税額が大きいだけに重い責任を問われるリスクが伴う。ベンチャーサポートはこのリスクを避けるために、これまで相続税・資産税業務とは距離を置いていた。しかし、東京相続サポートセンターが設立されたことで、同社もこの分野に本格的に取り組むことになった。今回の取材では、東京相続サポートセンターの立ち上げに関与した代表税理士の古尾谷裕昭氏(写真左)と、相続支援部統括マネージャーの西井康浩氏(同右)に、相続税・資産税業務に取り組む意気込みを伺った。

東京相続サポートセンター設立の経緯

―― ベンチャーサポート税理士法人は、新設法人をターゲットに顧客拡大を続け、現在は顧問先の数が約5000社という驚異的な規模に発展しています。そんな貴社が、新たに「東京相続サポートセンター」というチームをつくり、相続・資産税にも取り組むことになったと伺いました。そこで、チームの中心人物である古尾谷先生と西井先生にお話を伺いたいと思います。
 相続・資産税は高付加価値業務ですが、高付加価値だけに重い責任を問われるリスクもあります。そのため貴社はこれまで、この分野にはあえて取り組んでいませんでした。そのような方針をなぜ転換したのかお話しいただけますか。

古尾谷 法人の相続対策となると、不動産や事業承継問題などが絡んでリスクが大きくなります。ですから私たちはこれまで、そのような案件は外部の専門機関をご紹介するという形で対応してきました。
 しかし、税理士法人から始まったベンチャーサポートも年を重ね、社会保険労務士法人、行政書士法人、司法書士法人と次々と立ち上がっていきました。経営者のさまざまなニーズに自分たちで対応できるようになるなか、相続の相談にも自前で対応したいという声が、社内で強くなってきたのです。
 事業承継や相続案件自体も日増しに増え、そういった顧客ニーズや、社員からの声を踏まえ、また、高齢化社会という時代の流れからしても、やはり相続部門をつくるべきではないかとの議論が煮詰まってきたという背景があります。
 またベンチャーサポートは、ITを駆使した集客力を強みとして顧客拡大を図ってきた経緯があります。その集客ノウハウを相続税・資産税の分野に応用できるのではないかという考えもあり、専門部署として東京相続サポートセンターを立ち上げました。

―― 東京相続サポートセンター立ち上げの要になった西井先生は、ベンチャーサポートを一度退職し、今回、戻ってこられたとお聞きしました。そのあたりの経緯についてお聞かせいただけますか。

西井 私がベンチャーサポートを退職したのは、税理士の仕事をするなかで、資産税をやりたいという思いが強くなっていったからです。ベンチャーサポートでは資産税はやらないという経営方針でしたから、新しい場所で自分の可能性を試そうと思い、それがかなえられる場所を探しました。
 ベンチャーサポートは新設法人の経営支援で伸びてきた事務所です。平成15年に大阪で設立され、私が入った平成20年頃から急成長していきました。ですから、ベンチャー企業の成長期に発生する問題とその解決策についていろいろと学べました。新しい所で自分の力を試すなら、この経験を生かせる事務所を選ぼうと考え、ベンチャーサポートのように、成長期にある資産税・相続税専門の事務所の門をたたき、運よく採用されました。

―― しかし、その事務所から、またベンチャーサポートに戻られたのですね。

西井 もともとベンチャーサポートの社風は嫌いではありませんでした。ですから、ベンチャーサポートのような若手中心で勢いのある、まさにベンチャー的風土の事務所を選んで転職したのです。そこで私は十分満足のいく仕事をさせていただきました。
 ただ、人材の登用が実務重視で、その方針が自分には合わなかったのです。私は、意欲がある人はチャンスを得られるのがベンチャーだと考えていました。そのような思いを、飲み屋で古尾谷にぶつけたのです。

古尾谷 西井から「独立したい」という相談を受けたのが今年(2016年)の5月でした。たまたま昨年末あたりから資産税・相続部門を立ち上げるか否かという議論が持ち上がっていたところでしたので、「だったら一緒にやるか」という流れになったのです。さかのぼれば、それが東京相続サポートセンターの発端になります。

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