株式会社TKC 代表取締役社長執行役員 角 一幸
代表取締役専務執行役員 飯塚真規

1966年10月に法学博士・Ph.D・税理士・公認会計士の故飯塚毅氏によって創設された株式会社TKC(本店・栃木県宇都宮市)は、2016年に創業50周年の節目の年を迎えた。この間、経営のバトンは飯塚真玄氏や角 一幸氏へ引き継がれてきたが、会社定款にも掲げている事業目的の「会計事務所の職域防衛と運命打開のため受託する計算センターの経営」については一貫してぶれることがなかったという。第50期を迎えた直近の決算業績は、売上高・利益ともに過去最高を達成し、TKC全国会の会員数も1万1000名を超えた。
クラウドやフィンテックなど会計事務所業界を取り巻く環境が劇的に変化する中で、代表取締役社長執行役員の角 一幸氏(写真右)と、代表取締役専務執行役員の飯塚真規氏(同左)に、TKCが大切にしてきたものと進もうとする道、さらに会計事務所がこれから目指すべき道について伺った。

会計事務所の支援に専門特化した会社

—— 株式会社TKCは2016年10月に創業50周年を迎えました。この50年間、貴社はどのような考えを大切にして経営されてきたのでしょうか。

 当社は、1966年10月22日に、栃木県宇都宮市を本店所在地として設立されました。そこで、創業者である飯塚毅博士は、設立に際して会社定款に記載する事業の目的を次の二つとしました。
1.会計事務所の職域防衛と運命打開のため受託する計算センターの経営
2.地方公共団体の行政効率向上のため受託する計算センターの経営
 それ以来、当社は一貫して会計事務所と地方公共団体の二つの分野に専門特化した情報サービスを展開してきました。そこで、なぜサービスの対象として中小企業を選ばずに、会計事務所を選んだのか。それは、会計事務所を支援することが、結果的に中小企業を支援することにつながると考えたからです。その選択の背景には、飯塚博士自らが税理士・公認会計士であったことが大きいでしょう。
 中小企業白書や各種調査資料を見ても、中小企業経営者の多くが経営課題の相談相手として真っ先に「顧問税理士・会計士」を挙げています。会計事務所は、中小企業経営者から経営に関する悩みの「親身な相談相手」として期待されていることが明らかです。われわれが直接中小企業をご支援するよりも、会計事務所が十分な武器を持ち、その専門性を発揮しながら「親身な相談相手」として中小企業を支援することの方が、経営者にとってのメリットは大きいはずです。
 ITの伸展によって、私たちはさまざまな方法で中小企業を直接支援するサービスを展開することが可能になりました。それを実現するための経営資源も持ち合わせています。しかし、私たちが会計事務所を通さずに中小企業を直接支援することは、会計事務所がその専門性を発揮して活躍する機会を奪い、中小企業経営者の期待にも応えられず、結果として中小企業の役に立つ支援とはなりえません。従って、今後も中小企業を直接支援することはありません。この選択は、当社として譲ることができないものです。

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