税理士法人さくら優和パートナーズ 代表社員 税理士 岡野 訓

福岡、熊本、鹿児島の3会計事務所が合併して生まれた「税理士法人さくら優和パートナ ーズ」。スタッフ 90 人超、九州では最大級の税理士法人だ。特徴的なのは、地域が異なる事務所同士が連携し、連合体を形成している点にある。複数の会計事務所が横の連携を取る形で規模を拡大し成長および継続性を図るケースが増えるなか、このようなケースは極めて珍しい。他地域事務所との合併は利害関係がぶつからないため、法人化がスムーズにいく可能性が高く、今後このようなパターンが増えていくと思われる。そこで今回は、同税理士法人設立の中心人物であり、熊本事務所代表社員の岡野訓氏(写真)に、3事務所連合によって得られたメリット、優位性、そして成果についてお話を伺った。

トップ3人の思惑が一致した絶好のタイミング

―― 本日は、九州の福岡、熊本、鹿児島の3事務所合併の立役者となられた岡野先生に、税理士法人設立の経緯や事業戦略をお伺いしたいと思います。
 先生ご自身は熊本のご出身で、熊本で開業されていますが、まずは「税理士法人さくら優和パートナーズ」誕生までの経緯を簡単にご説明いただけますか。

岡野 私はもともと銀行に勤めていましたが、税理士を目指して銀行を退職し、勉強しながら会計事務所勤務を経て、平成14年、熊本に岡野会計事務所を開設しました。その後、20年に岳父が経営する宮部税理士事務所と合併して「税理士法人 熊和パートナーズ」を設立しました。そして26年には福岡の藤田ひろみ税理士事務所と経営統合して「税理士法人 優和パートナーズ」、その翌年には鹿児島を拠点とする「税理士法人 鹿児島さくら会計」と経営統合して、「税理士法人 さくら優和パートナーズ」へと社名を変更しました。

―― 福岡、鹿児島の事務所と連携しようとお考えになった理由は何ですか。

岡野 平成23年の九州新幹線鹿児島ルートの全線開通です。これによって大幅に時間が短縮され、地域同士が近くなりました。これが九州における会計事務所の勢力図に少なからず影響を与えました。例えば、熊本の事務所が福岡に、あるいは福岡の事務所が熊本に進出するようになりました。熊本で開業していた私たちも、少しずつ福岡のお客様から声をかけてもらえるようになっていったのです。
 福岡のお客様が増えてくると、所内で「福岡に拠点を出さないと対応できなくなりそうだ」という声が出始めました。それで福岡に支店を出そうと考え始めたときに、藤田ひろみ税理士事務所の藤田先生を思い出しました。2~3年前、「福岡に来るならここの事務所を貸してあげるよ」と言われたことがあったのです。そこで思い切って相談しました。「あの話はまだ生きていますか?」と。

―― それでは、初めは藤田事務所に間借りして福岡支店を出すおつもりだったのですね。それが税理士法人という方向に進んだのはなぜですか。

岡野 人の問題です。会計業界が今、全国的に人材不足であることはご存じのとおりですが、特に熊本は地震の影響もあり、福岡に続いて求人倍率が高く、売り手市場になっています。ですから、福岡に支店を出しても熊本から人を送るのは簡単ではありません。福岡に人を回せば、熊本の母体のほうが手薄になってしまいます。そのような事情から合併を提案しました。

―― 藤田先生はすぐに賛同してくださいましたか。

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