株式会社エヌエムシイ代表取締役社長の野本昌伯氏
通信機能を搭載した財務システム「CASH RADAR」で中小企業にコンピュータ導入による〝経理革命〟をもたらし、一躍業界に名をはせた株式会社エヌエムシイ(東京都中野区、福島県いわき市)。その後、会計事務所フランチャイズ事業の 「経理コンビニ」、情報共有化システムの「私書箱」など、次々と会計事務所向けのシステム開発に取り組んできた。平成27年からは、会計事務所職員に特化した人材紹介サービスを開始。同社の開発した在宅人材活用の仕組みは、全国の会計事務所から支持を得ている。そこで今回は、2年半前に先代のカリスマ経営者・野本明伯氏から事業承継した、同社代表取締役社長の野本昌伯氏(写真右)と、執行役員の木村哲也氏(同左)に、会計事務所の新しいビジネスモデルと、エヌエムシイグループの事業戦略についてお話を伺った。(写真撮影:岩本 剛)
会計事務所の効率化を追求し続けてきた46年
―― 本日は、「CASH RADAR」で知られる株式会社エヌエムシイの野本社長と木村執行役員に、会計事務所向けシステム開発の歴史を伺いつつ、今後の業界の行方を探っていきたいと思います。まずは、エヌエムシイのこれまでの足跡についてお話しください。
野本 当社は昭和48年、父が福島県いわき市の自宅で開業したのがスタートになります。そこから徐々に職員を増やし、移転もして規模を広げていきました。私は幼少期から事務所に入り浸りで遊び場にしていましたから、事務所は私にとってわが家のような感覚です。
―― 創業者の野本会長は、どのような思いで開業されたのでしょう。
野本 ローテクな会計業界に対する憤りがあったと思います。会計事務所を一般企業のような組織にしたかったのでしょう。例えば、ペーパーレス化したおしゃれなオフィスなどです。そこに父の美学があったのです。そのような理想の会社を目指して今年で創業46年目ですが、先日、新卒から入所した職員が2名、定年退職しました。
―― 会計事務所ではめったにないことです。
野本 父の葬儀には元従業員の人たちが大勢集まってくれました。それだけ好かれていたのだと思います。実は、当社を辞めた人たちは皆成功しています。それは、野本会計の教育を受けたからだといわれています。