長期金利が低いまま安定しているため危機感を抱く人は少ないが、日本の財政は世界的に見ても極めて悪い状況にある。財政問題に端を発する経済危機はいつ起きてもおかしくなく、ひとたび起きれば国内経済や国民の生活に致命的な影響を及ぼすだろう。こうした状況に警鐘を鳴らしているのが、参議院議員であり、著名な経済評論家でもある藤巻健史氏である。同氏は世間に蔓延している「日本は絶対につぶれない」「円は今後も安全資産」といった楽観論を戒め、経済危機の「Xデー」に対する備えを勧めている。今回の取材では、藤巻氏に日本の財政を取り巻く状況と、経済危機が起きた場合の影響について伺った。さらに、会計事務所が関与先の資産を守るために何ができるのかについてもご教示いただいている。

世界的に見ても悪い日本の財政

―― 本日はエコノミストやトレーダーとして知られ、現在は参議院議員として活躍されている藤巻先生にお話を伺います。
まずは昨今の金融情勢について、先生のお考えをお聞かせください。

藤巻 私はかなり危機が迫っていると感じています。なぜ日本人がこれほどまでに呑気でいられるのか不思議なほどです。
それは現在の日本の財政は、世界で一番悪い状況だからです。対GDPで考えると、日本の次に悪いのがギリシャ、その次がイタリアという状況です。ただ、多くの方がご存じのように、ギリシャの財政が悪くなると大きな騒ぎになりますし、イタリアにも最近ポピュリズム政党ができて増税、バラマキを実施しています。この2カ国には世界も騒ぎますし、長期金利も上げています。
ところが、それよりも状況が悪い日本では、長期金利は低位安定しており、誰も危機感を持たないのです。楽観論が蔓延していると感じています。

―― なぜこのような状況になってしまったのでしょうか。

藤巻 ギリシャやイタリアでは、本当にお金がなくなると、IMF(国際通貨基金)や世界銀行から借金をしなければ社会福祉が維持できなくなったり、公務員に給与を渡せなくなったりしてしまいます。
しかし、日本の場合には「異次元の量的緩和」と呼ばれていますが、要するに足りなければお金を刷ってしまいます。資金繰り倒産の可能性はないので、日銀が支援すればいいという状況です。

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