高齢化社会が本格化するなか、他業種から介護・福祉事業に参入する企業が増えている。政府も介護が抱えるさまざまな潜在ニーズや課題を重視し、介護サービスのマーケットの確立、介護職員の処遇改善を目指し、規制緩和に乗り出している。本稿では株式会社ジェイ・エス・ビーの山本貴紀氏(写真左)が、C-MAS介護事業経営研究会最高顧問の小濱道博氏(同右)に、高齢者住宅事業を取り巻く状況と、今後の法改正による市場動向予測についてお話を伺った。

来年の報酬改定で福祉系サービスの報酬が下がる

山本 ジェイ・エス・ビーでは、平成25年の5月よりサービス付き高齢者向け住宅の運営を開始し、これまで9つの住宅を手掛けてまいりました。昨年、損益改善に取り組み、次のステップに向けたスタートラインに立ったところですが、平成30年度の報酬改定が間近に迫っている状況です。そこで本日は、「C-MAS介護事業経営研究会」の最高顧問でいらっしゃる小濱道博先生に、高齢者向け住宅事業を取り巻く状況についてお話を伺いたいと思います。
先般、安倍総理がご利用者様の要介護度が下がれば、その対価として報酬を上げるという趣旨の発言をしました。介護事業では、要介護度の高い方を受け入れることが、損益の観点から優先されてきましたが、小濱先生は今後どのような報酬改定を予測されますか。

小濱 安倍総理のその発言は「自立支援介護」、すなわち、サービスを提供したご利用者様の状態が回復し、介護度が下がれば報酬を上げる。「回復」と「自立」を評価するということです。
ただ、介護保険法で「回復」が謳われているサービスは医療系サービス、すなわち介護老人保健施設、デイケア、訪問リハビリテーションに限定されており、訪問介護やデイサービス等の福祉系サービスには当てはまりません。つまり、自立支援介護の対象はあくまで医療系サービスだと捉えてよいと思います。

山本 では、医療系サービス以外では、多少の報酬改定はあるものの、基本的な方向性はあまり変わらないと考えてよいのでしょうか。

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