石黒健太税理士事務所 代表税理士 石黒健太
京都に拠点を置く石黒健太税理士事務所は、設立5年で売上高1億2000万円を突破するという目覚ましい成長を遂げた。その要因は、起業家向けの創業サポートや財務コンサルティングを積極的に行ってきたことに加え、クラウド会計/DXの導入支援と、AI/フィンテックを活用したサービスの開発を、市場の黎明期から推進したことにある。また、ドラッカーやランチェスターの理論を顧客と学び合うセミナーの開催や、税理士たちがノウハウを共有するコミュニティーの創出など、人と人を結ぶ多彩な活動も見逃せない。さらに、スタッフの平均年齢約30歳、かつ8割以上が女性……といった柔軟な経営体系も、新進気鋭の「石黒流」を構成する重要なエッセンスだ。小規模事務所の生き残りが厳しい時代にあって、氏が力強く示すのは「ニーズを見極めれば存在価値を生み出せる」ということ。その独創的な戦略と哲学を、インタビューから探ってみたい。(撮影 市川法子)
先端的な事業を武器に創業5年で売上1億円を突破
―― まず、石黒健太税理士事務所の沿革を伺います。開業した時期や経緯からお聞かせください。
石黒 開業したのは平成28年、30歳のときです。いくつかの税理士法人で経験を積んだのちの独立でしたが、わりと急展開で事務所設立を決断したのでオフィスをじっくり探す余裕がなく、住んでいたマンションの別室をオーナーさんに頼んで事務所として貸していただきました。そこで僕と社員1名、パート1名の3名でスタートしました。
―― 単独ではなく、最初から3人体制だったのですね。
石黒 はい。独立前に所属していた法人で滋賀県の支店を任されていたのですが、僕が辞めると同時にそこも閉じることになったため、一緒に働いていたスタッフを雇い入れました。さらにもうひとり、事務所の立ち上げを手伝いたいと申し出てくれた人物にも加わってもらい、2年後に京都に移転しました。
―― 現在8年目ですが、短期間でずいぶん規模を拡大されましたね。
石黒 はい。今は18名が在籍しています。
―― 売上高も創業5年で1億円を達成されたそうですが、どのような経営方針をとっていますか。
石黒 開業時の目標が、まさに5年で売上高1億円の事務所に育てることだったのです。それを実現し、ある程度の規模になったので、ここ半年で経営理念の刷新を進めてきました。そして新たに掲げたのが、「企業の成長を加速させ、明るい未来を創造する」というものです。この理念の意図するところは、蓄積した知識やノウハウの還元ということになります。
僕は前職で創業支援や起業支援を手がけ、仕事としては問題なくこなしていたものの、自分が起業したことがないにもかかわらずコンサルティングを行うことに、どこか疑問を抱いていました。つまり、自ら組織をつくる、売上を追う、雇用する……そういうことを経験したうえでサービスを提供したいと。事務所が軌道に乗った今こそ、培ってきたものを本当にお客様のために活かせると思っています。