株式会社ミロク情報サービス 代表取締役社長 是枝周樹

株式会社ミロク情報サービス(東京都新宿区)は、1977年の創業時から日本経済への貢献を目標に掲げ、会計事務所や中堅・中小企業の経営革新を支援する財務・会計システムのベンダーである。2021年から始まった「中期経営計画Vision2025」において、会計事務所の業務効率化ソリューションを提供することによる会計事務所ネットワークNo.1を掲げるとともに、収益基盤の強化を目的としたサブスク型ビジネスモデルへの転換を進めている。2023年10月、ついにインボイス制度が開始され、同社がこれまで準備を重ねてきた各製品・サービスが始動している。電子インボイスや改正電子帳簿保存法(以下、電帳法)に対応したDX化支援についても強化され、業務改善につながるAI-OCRの機能拡充も予定されている。今回の取材では、会計事務所支援の在り方や、直近一年間の活動、強化されたサービスの内容などについて、同社代表取締役社長の是枝周樹氏にお話を伺った。(撮影 古藤 毅)

原点に立ち返り会計事務所のDX化支援を強化

―― 今年で創業48年を迎える株式会社ミロク情報サービス(以下、MJS)では、2021年からスタートした「中期経営計画Vision2025」の基本戦略に則(のっと)り、会計事務所の付加価値の向上や新たなビジネスの創出に貢献する「会計事務所ネットワークNo.1戦略」、誰もが簡単にDXを実現できる「統合型DXプラットフォーム戦略」、MJSにおける「クラウド・サブスク型ビジネスモデルへの転換」などを推進しています。
本日は、同社の代表取締役社長である是枝周樹氏に、この一年を振り返っていただくとともに、これからの展望や会計事務所に対するサービスの在り方についてお聞きしたいと思います。
まずは、MJSの昨年(令和5年)のご活躍を振り返って、一年間の総括をお願いします。

是枝 インボイス制度の開始とともに、同制度や改正電帳法に関するさまざまな製品やサービスがようやく動き始めました。当社もまた、これまで準備を重ねてきた関連製品やサービスを、新制度の始動に合わせて拡大しています。さらには金融サービスや他社製品などと当社のサービスがシームレスに使えるよう、さまざまな取り組みに注力した一年でした。ただ、インボイス制度や改正電帳法は、これまでにないほど国民の関心が高い制度であり、関係省庁と対話をして、歩調を合わせて進めていかなければならない部分もありました。
それともうひとつ、会計事務所に対するDX化の支援について、「原点に立ち返る」ということを意識するようになった一年でもありました。

―― 計算センタービジネスやオフコンの時代から会計業務を技術革新でリードしてきたMJSが、ここにきてあえて「原点に立ち返る」というのはどのようなことを意味するのでしょうか。

是枝 会計事務所のDX化が、会計業界における重要な課題であるという認識は変わりません。会計事務所のDX化は、会計業界の人手不足の解消や、労働集約型からより付加価値の高い知的集約型のサービスに移行するための重要な手段であると考えています。このことは、貴社の近年のインタビューでも申し上げてきたところです。MJSでは、この重要な取り組みへの過渡期にある先生方をご支援していくことが責務であると考えています。

しかし今、このままAIやブロックチェーンといった新しいデジタル技術につなげていく前に、事務所経営の根幹的な部分の支援に立ち返る必要があると感じています。
その理由としては、まず今求められている会計事務所のDX化は、それまでの業務に対する価値観の変化を伴うものであることです。例えば、仕訳という業務は長い間、人によって確認をしながらやっていくことが重要とされてきました。一つひとつが決算の基礎になるものですから、人が正確に手入力することが必要であり、われわれもそう考えて製品を開発してきました。それが今では、OCRやAIの技術によって、仕訳という概念を業務から大きく減少させることが求められています。そればかりか、余った時間と人員を、顧問先のコンサルティングや経営指導といった伴走型の支援に替えながら、より付加価値の高いビジネスに変化させていくことも考えなければなりません。そこに電帳法やインボイスといった法制度への対応が加わり、DX化の取り組みは混沌(こんとん)とした状況にあります。そのため、新しい技術や制度に対応する前段階として、事務所の体制づくりに関するご支援が必要なのではないかと考えたのです。

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