オーナーズ株式会社 代表取締役社長 公認会計士 作田隆吉
事業オーナーに寄り添い、M&A成約から売却後の資産運用まで一気通貫で継続的にサポートするオーナーズ株式会社(東京都港区)。立ち上げたのは、大手監査法人などで過去十数年にわたり大企業のM&Aに携わってきた代表取締役社長の作田隆吉氏(写真)だ。中小企業の労働生産性改善や事業承継問題といった、日本の抱える社会課題の解決に挑戦するため、公認会計士や投資銀行出身者を中心としたM&A支援事業のプロフェッショナルチームを結成。特徴的なのは、現在、M&A市場の主流となっている売り手と買い手のマッチングサービスとは立場の違う、「売り手中小企業専属のFA(ファイナンシャルアドバイザー)」というスタイルで支援し、企業オーナーの「利益の最大化」を目指すという点だ。今後、会計事務所との連携強化も視野に、どのようなM&A支援の事業展開を考えているのか。作田氏にお話を伺った。
(写真撮影 市川法子)
売り手の中小企業に寄り添ったM&A支援
―― 本日は、中小企業のM&A支援に深く携わっているオーナーズ株式会社の作田社長にお話を伺います。貴社は2年前に立ち上がったばかりの新しいM&A支援企業です。ただ、M&A支援といっても、マッチングを中心とした仲介会社ではなく、専属エージェント制のM&A支援ということで、今日はそのあたりを詳しく伺いたいと思います。まずは、作田社長のご経歴から、オーナーズ株式会社設立の経緯までをお聞かせいただけますか。
作田 私の職歴は会計士からのスタートになります。会社の財務に関心があったことから公認会計士を目指そうと決意し、慶應義塾大学経済学部在学中の2005年、旧公認会計士2次試験に当時最年少で合格しました。
大学卒業後は新日本有限責任監査法人に入所し、公認会計士監査を中心に5年近く勤務しました。時代的に内部統制の構築支援プロジェクトにも携わっています。
2011年に現在のデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社し、約11年間、製造業やテクノロジー、消費財、流通小売、ヘルスケアなど多岐にわたる日本企業のM&A支援に携わりました。ただ、11年のうち半分は海外勤務で、主にロンドンオフィスにおいて、Advisory Corporate Financeチームのディレクターとして、日本企業の欧州M&A支援に従事しました。その後日本に戻り、2021年に独立し、オーナーズ株式会社を設立しました。
―― 貴社は中小企業を対象としたM&A支援に特化した会社と伺っていますが、この事業を立ち上げようと考えたきっかけは何だったのでしょうか。
作田 デロイトのロンドンオフィスで、私はEU各国の企業と日本の企業のM&A案件に従事していたのですが、そこで、日本とヨーロッパの国々との違いについて、ある問題意識を持つようになりました。それはヨーロッパのほとんどの国は日本より小さいにもかかわらず給与所得水準が高く、社会インフラも整っているということです。教育のレベルも高く、北欧では誰しも英語を話せますし、医療のレベルも高いのです。税金は高いけれども、日本に比べて社会全体がうまく循環している印象を強く受けました。
その要因を探ったところ、国全体の労働生産性が高いことが分かりました。しかも、規模の大きな企業、組織で働く人の割合が高く、これが国全体の生産性を上げていたわけです。実は、中小企業庁のデータでも、これは証明されています。大企業と中小企業とでは労働生産性が大きく乖離しています。その差は倍以上です。
「人口×1人当たりの生産性」がGDPであることを考えれば、人口が急激に減少している日本が今、危機的状況にあることは一目瞭然です。このまま中小企業の低い労働生産性を放置しておくと、この国の社会インフラを今の水準で維持することはできなくなると思いました。
そこで私は、中小企業の発展に寄与することこそ、最も意義のある仕事ではないかと考えました。そうして、これからの人生を中小企業の発展に貢献しようと心に決め、中小企業支援サービスを事業にした会社を立ち上げたのです。