一般社団法人 空家空室対策推進協会 代表理事 川久保文佳

空家問題は今や日本で社会問題化しつつある。空家は年々増加するとともに、空家を所有するリスクは看過できない事態になっている。というのも、2015年に施行された「空家等対策特別措置法」により固定資産税増額の対象となった「特定空家」の税額が、2023年の法改正でさらに大幅に増える見通しとなったからだ。特に、相続時に空家空室問題が顕在化することが多く、顧問先の相続対策サポートに取り組む会計事務所にとって、早急に策を講じる必要がある。そこで今回、空家空室問題に対してさまざまな提案・啓発活動を行っている一般社団法人   空家空室対策推進協会(東京都目黒区)を取材した。同協会では、空家や空室への対応に苦慮している所有者に、民泊転用、古民家再生、貸店舗運用といった対策を助言するとともに、それらの支援ができる専門家の教育を行う「空家空室対策士認定制度」を設立した。空家空室対策は地域の活性化にもつながり、必然的に地域との連携が鍵を握るため、同協会では現在、全国各地の士業との連携を目指している。今回の取材では、その取り組みについて一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事の川久保文佳氏にお話を伺った。
(写真撮影 市川法子)

7年後には3軒に1軒が空家に

―― 本日は、空家問題に詳しい一般社団法人 空家空室対策推進協会の川久保文佳代表にお話を伺います。近年、社会的に注目されている空家問題ですが、特に今年の法改正で固定資産税の増額にもつながるリスクが増大していると聞きます。
本日はそのあたりの背景も含めて、貴協会の支援事業、啓発活動への取り組みについて伺いたいと思います。はじめに、川久保代表のご経歴からお話しいただけますか。

川久保 私は北海道の函館出身で、道内のIT企業を経て株式会社リクルートに籍を置き、住宅情報事業部で住宅関連書籍の編集部門で約10年間、執筆活動をしました。
その後上京したのですが、諸々の事情で化粧品会社に就職し、それからしばらくはコスメ業界に身を置いていました。通販、流通、製造など全般に携わり、通販番組に出演して丸一日で約1億円を売り上げたこともあります。そこから化粧品会社を設立し、アジアを中心に化粧品などのコンサルティング業に従事しました。またジェトロの依頼を受け、パレスチナで日本との輸出入を支援する仕事もさせていただきました。

しかし不動産関連の仕事がしたいという思いが消えず、いろいろと考えた末、かねてから注目していた日本の空家問題を解決するための事業を立ち上げようと決意し、平成25年、空家空室対策推進協会を立ち上げました。

―― なぜ、空家問題に注目するようになったのでしょうか。

川久保 空家の存在に問題意識を持ったのはリクルート時代です。当時、空家問題は今ほど表面化しておらず、空家が増えてきたなという程度で、社会的にも問題視されていませんでした。
しかし、住宅情報事業部で取材を重ねていくなかで、空家の処分に困っている人たちが多いことを知りました。昔は、家を持つことは誰でも当たり前の夢だったのに、それが無駄なものであるような扱いをされていたのです。私としてはとてもやるせない思いになりました。

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