金森民事信託法律事務所 所長 弁護士 金森健一
顧問先の高齢化に伴う相続・事業承継対策、認知症対策として注目される民事信託・家族信託には、デメリットもある。例えば、世代を超えて関係者を拘束することや遺留分請求の対象になり得ることなどだ。しかし、法律の専門家でない民事信託・家族信託の利用者が、デメリットを十分に理解しているケースはほとんどないだろう。2021年5月号で取材した、信託を専門とする金森民事信託法律事務所所長の金森健一氏(写真)によれば、民事信託の契約条項の説明不足によって、関係者が理解不十分なまま信託契約が設定される実態があるという。さらに、こうした手続きによる信託契約であっても即座に無効となるわけではなく、後から不利益に気が付いて取り消しを求めても、裁判所に認めてもらえない可能性もあるようだ。金森氏は、家族信託には現在もなお不明確な点が多いとし、セミナーや研修会を通じて専門家に慎重な対応を呼びかける。全て「家族を幸せにする信託」を普及させたい信念に基づいた行動だ。独立後、約1年が経過し、本年3月には新著「民事信託の別段の定め 実務の理論と条項例」(日本加除出版)が発刊された。事務所の近況や新著について、金森氏にお話を伺った(撮影 瀬底正弥)。
「創るお手伝い」と「徹底的に壊すお手伝い」
―― 本日は、信託・民事信託を専門とする金森民事信託法律事務所所長、弁護士の金森健一先生に、会計事務所とのアライアンスや、最新の著書「民事信託の別段の定め 実務の理論と条項例」のお話を伺います。
まずは、近況をお伺いします。約1年前、開業当初に行った弊誌の取材(2021年5月号)において、得意業務として、民事信託の設定や運営の支援、金融機関に対するコンサルティング業務、信託会社などに対する支援、セミナーや研修会における講演を掲げていらっしゃいました。最近の取り組みはいかがでしょうか。
金森 現在も、その4つの業務に力を入れています。特に、お客様に民事信託を提供している司法書士、税理士など、士業の先生方をご支援する機会を多くいただいています。