税理士法人恒輝 代表社員/榎本会計事務所 所長 税理士 榎本恵一
来年10月に予定されている消費税の税率引き上げや、軽減税率制度の導入に伴い、請求書に消費税率や税額を細かく記載するインボイス制度への移行が始まる。インボイス制度は事業者の納税額を正確に把握するための措置だが、経理業務が煩雑化し、会計事務所と中小企業に重い負担としてのしかかることが予想されている。そして、こうした負担を軽減するため、会計事務所と中小企業の双方で、ペーパーレス化など、業務改革の取り組みが急速に進むと考えられている。税理士法人恒輝/榎本会計事務所(東京都墨田区)は、業界に先駆けて業務改革の取り組みに力を入れていることで知られている。顧問先にクラウドERPを導入してペーパーレス化を推し進めているほか、業務効率化の切り札といわれているEDI(電子データ交換)の実証実験にも参加し、この仕組みの普及に取り組んでいる。本稿では、同事務所所長の榎本恵一氏(写真)に、業務改革を巡る会計業界の現状や今後の展望、クラウドERPやEDIがもたらす可能性などについて伺った。
中小企業の経営者が会計事務所に求めていること
―― 生産人口の減少が進む日本では、労働集約的な業務はなるべく排し、生産性の向上や経営の見える化を図っていくことが求められています。そしてそれは、中小企業にとっても喫緊の課題だといわれています。
そのような状況のなか、会計事務所はどのような関与先支援を行えばよいのでしょうか。
本日は、顧問先の業務改革支援で成果を上げている税理士法人恒輝/榎本会計事務所所長の榎本先生にお話を伺います。
榎本先生は、なぜ顧問先の業務改革支援に取り組まれるようになったのですか。
榎本 私は、顧問料の低価格化が進行している会計業界の現状を、大変危惧しています。世間には、「会計事務所に払うお金はもっと減らすべきだ」という風潮が蔓延しています。
確かに、近年の技術革新によって、会計事務所の業務効率化は飛躍的に進みました。しかし、だから顧問料を下げますでは、何の意義もないと思います。そのようなことをしても、お客様の会社の発展にはほとんど貢献できません。
私は、お客様が心の底で求めているのは、顧問料を安くすることではないと思っています。