会計ソフトベンダーの弥生株式会社(東京都千代田区)は、昨年度の売上高が200億円超、登録ユーザー数220万人と、コロナ禍においても順調な成長を続けている。そんな同社が、会計事務所パートナープログラム「弥生PAP」の会員に対し、昨年9月にリリースしたのが「記帳代行支援サービス」である。近年では業務効率化のために、商取引の電子化に向けた気運が高まりつつある。時代は紙証憑を使わずに取引が完結する未来に向けて、大きく変化しようとしている。しかしその一方で、会計事務所は自計化ができない顧問先を抱え、「紙」を扱わざるを得ないのが現状である。会計事務所を経営する側の実感としては、「紙」を扱わずにすむ未来が訪れるのはまだ先のことだ。弥生の「記帳代行支援サービス」は、そのような状況に置かれた会計事務所のために、業務効率化を着実に推進するサービスである。弥生が会計事務所の代わりに紙証憑のデータ化を担い、「弥生会計」と統合された包括的な自動化の仕組みを提供することで、会計事務所は記帳代行業務の効率化を大きく進めることができる。本稿では、弥生代表取締役社長の岡本浩一郎氏(写真右)と、「記帳代行支援サービス」を活用している税理士滝沢淳事務所 代表税理士の滝沢 淳氏(同左)に、サービス立ち上げの背景や活用メリットなどについて伺った。(写真 市川法子)

岡本浩一郎(おかもと・こういちろう)
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岡本浩一郎(おかもと・こういちろう)
弥生株式会社代表取締役社長。昭和44年生まれ。神奈川県出身。東京大学工学部卒。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)経営大学院修了。野村総合研究所、ボストンコンサルティンググループを経て、平成12年に株式会社リアルソリューションズを設立。平成20年より現職。著書に「会計ソフトだけではダメ! 本当の会計の話」(平成23年、PHP研究所)がある。

コロナ禍にこそ求められるテクノロジーの活用

―― 本日は、弥生株式会社代表取締役社長の岡本浩一郎氏と、税理士滝沢淳事務所の代表税理士である滝沢淳先生にお話を伺います。
今回の取材では、弥生が昨年9月にスタートした「記帳代行支援サービス」の概要や立ち上げの経緯をお聞きしたうえで、会計事務所が同サービスを活用することで得られるメリットなどについて、開発・提供する側と利用する側の双方の視点から掘り下げたいと思います。
弥生が「記帳代行支援サービス」のリリースを発表したとき、会計事務所業界には衝撃が走りました。長年にわたり自計化を推進してきた同社が記帳代行の支援に乗り出したことで、業界の勢力図が大きく書き換わる可能性もあるからです。
本日はそのあたりも含めて、業界の今後の発展に向けた弥生の取り組みについても伺いたいと思います。
まずは岡本社長に伺います。貴社の近況を教えていただけますか。

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