世界的な新型コロナウイルスの感染拡大が、国境をまたぐ海外M&Aに悪影響を及ぼしている。2020年の日本企業による海外M&Aは147件と前年の196件を50件近く下回り、2013年(139件)以来の低水準となった。14年以降の海外M&Aは例年200件前後に達し、日本のM&A市場を押し上げてきたが、20年は様変わりとなった。M&Aは対面での交渉が大半を占めるだけに、世界的なコロナ禍で海外への渡航が難しくなり、M&Aの交渉が進みづらかったとみられる。
上場企業に義務づけられた適時開示情報をもとに経営権が異動するM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online編集部)が集計した。
国・地域別では米国、中国、シンガポールがトップ3だったものの、シンガポールは前年の20件から9件と半分以下に落ち込んだ。件数が年間10件以上だったのはオーストラリア、ドイツ、英国を含めて前年は6カ国あったが、2020年は米国、中国の2カ国のみだった。
アジアではベトナム(9件→3件)、インドネシア(5件→1件)で大きく落ち込んだ。欧州ではフランス(1件→5件)が伸びた半面、英国(10件→5件)が後退し、前年3件あったスウェーデンがゼロだった。
中国では、新型コロナによる受注減などを理由に生産拠点を現地企業に売却する動きが相次いだ。東京製綱(タイヤ補強材のスチールコード)、山王(表面加工、精密プレス加工)、レック(日用品)、太平洋セメント(セメント・骨材)ファルテック(自動車用品)などが中国工場を手放した。
こちらは
実務経営研究会会員
用記事です
すべての記事が読める「実務経営研究会会員(有料)」へご登録いただくと続きをご覧いただけます。