2019年の調剤薬局・ドラッグストア業界のM&Aは22件となり、2009年の21件を上回り、2008年以降の12年間で最多となった。ソフィアHDが全体の40%ほどを占める9件のM&Aを発表したため、件数が伸びた。
このほかウエルシアHD、キリン堂HD、ココカラファイン、ツルハHD、日本調剤の5社がそれぞれ2件の買収を発表しており、業界の集約が進んでいることがうかがえた。薬剤師不足も業界再編に拍車をかけている。
ただソフィアHDは9件中2件が中止となっており、さらに経営統合を目指していたスギHDとココカラファインも統合を断念するなど、破談の案件が目を引いた。
金額は約27億円で、2008年以降の12年間では2011年の約8億円に次ぐ2番目に少ない年となった。10億円を超える案件が1件にとどまったのに加え、非公表などが13件と全体の60%近くに達したことから金額が抑えられた。
ソフィアHDが1位から9位までを独占
2019年のM&Aでもっとも金額が高かったのは、ソフィアHDが調剤薬局7店舗を経営する泉州薬局(大阪府岸和田市)の全株式を約10億円で取得し子会社化することを決めた案件。
このほかで金額を公表したのはソフィアHDだけだったため、1位から9位までをソフィアHDが独占する形となった。このうち中止となったのは、3位のなのはな(宮城県塩竃市、調剤薬局事業を約3億円で譲り受けることを決めた案件)と、6位の調剤薬局経営のエイエムファーマ(山口県宇部市、全株式を約2億円で取得し子会社化することを決めた案件)。
ソフィアHDは経営多角化の一環として調剤薬局事業の拡大に乗り出しており、2018年も同事業に関して9件の買収を手がけている。2019年最後の案件となった、12月19日に発表した調剤薬局のわかば薬局(和歌山県御坊市)の子会社化(約9000万円)でも、「引き続きM&Aなどにより調剤薬局事業を拡大する」としており、2020年も多数のM&Aが見込めそうだ。
スギHDとココカラファインは、2019年6月1日に経営統合に向けて協議を始めると発表し、両社で経営統合準備委員会を設け、7月31日をめどに基本合意書の締結を目指すとしていたが、その2カ月半後の8月14日に基本合意書の締結には至らず協議を終了すると発表。同時にココカラファインはスギHDと並行して検討してきたマツモトキヨシHDと経営統合に向けた協議を始めると発表した。
さらに2日後の8月16日には、ココカラファインとマツモトキヨシHDが連名で協議開始に関する覚書の締結を発表。2020年1月末をめどに協議、交渉を続けるとしていた。