2019年のM&A総数は前年を59件上回る841件と4年連続で増加し、08年(870件)以来の高い水準となった。年間800件台に乗せるのは09年以来10年ぶり。M&Aの取引総額は8兆1201億円で、08年からの過去12年間では18年(13兆7278億円)、16年(12兆1578億円)に次ぐ3番目だった。
アサヒグループHDが豪ビール大手を約1兆2000億円で買収する案件が金額トップで、これに昭和電工が9640億円を投じる日立化成の子会社化が続いた。
国内案件、「1000億円超」続出~ソフトバンクが主役に
上場企業に義務付けられている適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介大手の株式会社ストライク(M&A Online)が集計。
取引金額が1000億円超の大型M&Aはクロスボーダー(国際間)案件を中心に22件あり、件数は前年(20件)と大差なかったものの、その内容に大きな変化がみられた。国内企業間で1000億円超の大型案件は前年1件にすぎなかったのに対し、19年の場合は9件に急増した。
金額ランキング上位には国内案件が並んだ。2位の昭和電工に続き、3~4位はソフトバンク絡み。ソフトバンクはポータルサイト大手のヤフー(現Zホールディングス)を子会社化し(2019年6月)、次にそのヤフーは衣料通販サイト大手のZOZOを子会社化した(同11月)。ヤフーと無料通話アプリ大手のLINEは昨年11月、2020年10月に経営統合することで基本合意。ソフトバンクが昨年のM&A市場で主役を演じたといえそうだ。
ユニゾは従業員買収の「奇策」
ホンダはショーワなど自動車部品メーカー3社をTOB(株式公開買い付け)で完全子会社化することを決めたが、このうち2社は買付金額が1000億円を超える。ホンダは日立製作所と双方の系列部品メーカーを経営統合することになっており、TOBはその一環。
TOBで最も注目されたのは不動産・ホテル業のユニゾホールディングス。同社は昨年12月、従業員による買収(EBO=エンプロイー・バイアウト)を実施して非公開化すると発表した。従業員と米投資ファンドのローン・スターが出資する新会社がユニゾにTOBを行い、全株取得を目指すもので、買付代金は1700億円超。別の米投資会社によるTOBに対抗する〝奇策〟だが、EBOは上場企業初とされる。
100億円超は68件 目立つ「豪」と「医薬」
取引金額が100億円を超えるM&A総数68件で、前年より8件増えた。68件中、クロスボーダー案件は40件と約6割を占めている。また、対象企業の国籍では豪州の台頭が目立つ。100億円超のM&Aで豪州案件は7件(売却1件含む)を数え、全体の1割強にあたる。人口増などを背景に市場拡大が見込まれるオセアニア地域での事業基盤を強化する動きとみられる。
業種別では製薬関連のM&Aが活発化している。アステラス製薬が遺伝子治療分野強化に向けて、米バイオ企業のオーデンテス・セラピューティクスを3200億円で買収を決めたのをはじめ、大日本住友製薬、旭化成、富士フイルムホールディングスが米欧企業を相手に大型M&Aを相次ぎ発表した。アジアでは、大正製薬ホールディングスがベトナムの医薬品会社を取り込んだ。
2019年のM&A総数は2008年以来の高水準を記録した。取引金額は8兆1201億円と、2008年当時の1・6倍に膨らんだ。