田中寛之税理士事務所
田中寛之税理士事務所所長の田中寛之先生は、6月28日に熊本県立球磨中央高校簿記部の生徒25名に、「経営計画書を策定すれば、やるべきことが決まる。―RPAなんてこわくない」をテーマに講演をした。
高校の商業科には、クラブ活動として、陸上部、バスケ部と同様に「簿記部」がある。簿記部に所属している生徒の大半は、高校生のうちから将来会計人になることを目指している。
全国の簿記部が競い合う「簿記甲子園」︵令和5年で第39回になる全国高等学校簿記競技大会︶という大会があり、球磨中央高校簿記部部長の木庭寛幸先生は、全国大会の常連出場の実績がある先生だ。
簿記部の生徒は、将来の税理士や公認会計士を目指して、高校時代から本格的に勉強している。人材不足の会計事務所業界には、まさしく期待の星たちだ。
しかしながら、実社会の情報が簿記部の生徒たちにも入ってくるので、「RPAやAIで会計事務所の仕事がなくなって、今の勉強が無駄になるかもしれない」「簿記会計の知識なんて何の役にも立たないかもしれない」と、内心、不安に思っている。
しかし、実際に現場に立っている者の生の声を聞く機会がないということで、今回の講演の運びとなった。
田中先生の講演の内容は次のとおり。
「勤務態度の悪い社員Aさんを抱えた社長が単年度の経営計画を策定したら収支トントンになりました。そこで社長に、『Aさんを解雇して、この実績をつくれますか』と問うたところ、『Aさんもいないと収支トントンにはならない。だからAさんの勤務態度がよくなるように努めるし、そのための行動目標︵アクションプラン︶については、できるだけ社員と行動を共にして、打ち解けるようにする。小さいことで褒めて、やる気にさせる』など、社長の口からやるべきことがすらすらと出てきたのです。
これこそが、経営計画の醍醐味なのです。﹃経営計画を策定すれば、やるべきことがみえてくる﹄のです。経営者自らが、自分の意思で決めきることが重要です。AIから提案されることであれば、﹃やらされ感﹄があるので、両者の間では圧倒的に熱量が違います。副題にありますように、﹃AIやRPAなんてこわくない﹄のです。
RPAやAIで従来の業績は縮小されていくかもしれませんが、質問をして、社長自らが改良、改善策を模索し立案し、実行したものの検証を支援する業務は、今後ますます脚光を浴びます。そのためには、今、会計的思考を身につけることはいつの時代にも必ず役に立ちます。まかり間違っても無駄になることはありませんよ。」
その後、活発な質疑応答があった。その様子を見て、生徒たちが会計業界の将来性に対する不安を拭い去り、業界に明るい未来があることに理解を示していることを確信した。この生徒たちが、一日も早く会計人の仲間になるのが待ち望まれる思いである。
最後に、高校新卒者の採用方法「学校斡旋」について記す。高校の紹介を受けて高卒採用する場合、まずハローワークへの求人票の登録が必要だ。求人票の登録は一般の枠とは異なり、高校新卒専用の求人票に記載する。そして、採用したい生徒の高校名を明示するシステムになっている。