建設業界の2021年のM&A発表件数は50件(うち中止1件)で、2012年以降の10年間では過去最多を更新した。これまで最多だった2018年(32件)の1・5倍ほどに膨らんだ。1社が3件、4社が2件の複数M&Aを実施したのをはじめ、多くの企業が事業拡大のために積極的な買収に動き、件数を押し上げた。取引金額は684億円で、2012年以降の10年間では2020年(1123億円)、2019年(785億円)に次ぐ、3位にとどまった。最高額が300億円台(2020年は800億円台、2019年は700億円台)と低かったため、件数ほどには伸びなかった。
全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。
金額トップはポラリス・キャピタル・グループの386億円
金額のトップは国内投資ファンドのポラリス・キャピタル・グループ(東京都千代田区)が、プレハブ建築や立体駐車場事業を主力とするスペースバリューホールディングスにTOB(株式公開買い付け)を行い、完全子会社化すると発表した案件で、買付代金は386億円。
スペースバリューHDはプレハブ建築と立体駐車場事業を両輪とする日成ビルド工業(金沢市)を中核とする企業で、非公開化によって業績回復と再成長に向けた構造改革を加速する。
金額の2番目は新日本建設が中堅ゼネコン(総合建設会社)の冨士工(東京都中央区)の全株式を150億円で取得し子会社化すると発表した案件だったが、その後子会社化後の経営方針など主要な点で見解の相違があったとして、株式譲渡契約の解除を発表した。
金額の3番目は三井住友建設が、海上、水上杭工事を主力とするシンガポールのAntara Koh Private Limited(AKPL)の全株式を取得し子会社化することを決めた案件で、取得価格は約76億円。
AKPLは三井住友建設が手がける海外橋梁工事で主に基礎工事を担当するパートナーとして長年、信頼関係を築いてきた。三井住友建設はAKPLが保有する船舶や杭基礎技術の活用や施工管理体制の連携などによって、競争力が高まると判断した。
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